聞いてない ページ10
最終日、やっぱり翔陽たちが特に注目されていた。
翔陽たちの恐らく手にピンポイントに止めて落とされるトスと他の人達のシンクロ攻撃、リベロの人からのトスとエース人のバックアタック。
『すっげぇええええ!!!』
何時ものんびりしていた声を乗せているAも声をはりあげて驚いていた。
『珍しいね』
『研磨くんこそ、にやにやしてる』
どんな顔、と聞くとクロと一緒に「「ワクワク顔」」って言った。
『意味わかんない、してないし』
『してる』
『してない』
『『してる』』
2人はずるいでしょ。なんでそんなにピッタリなの声。
それから合宿が終わり、先生達が用意してくれていたらしいBBQを生徒全員が囲む。逃げようとはしてみたけどクロに捕まった。
しまったこんなことになるのなら少し早く逃げとけばよかった。仕方なく端っこの方で食べていると声がした。
(…あ、A)
誰かと電話しているみたい。邪魔しちゃ悪いし、と声はかけないけどこれはこれで盗み聞きしているみたいで気分は良くない。
「こんな時にごめんねっ、うん、うん…分かってるよ」
相手は多分あの親友さん。いつも一緒にいるから頼られる事も多いんだろうな、なんて。
「それで私ね、出ることにしたんだ。ワンダーアートコレクション」
その口から出た名前に耳を疑った。絵なんかに興味無い俺でも聞いたことはある。今年はどこで開催されるかは知らないけど世界的な芸術の祭典。
その名前がAから出た。しかも、出るって言った。
電話の向こう側にいる親友さんの声が少し漏れている。
(…ワンダーアートコレクションって、今年フランスじゃん)
間違いなく日本から離れることになる。しかも予定の日を確認して今から絵を描くってことになるのなら近くに出発するということだ。
自分がたとえば春高に行けたとしても、彼女がそれを生で目にすることはないという事だ。
確かに親友さんと違ってそんな親友って程仲良くない。
異性だし。
(…聞いてないんだけど)
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