四十七話 ページ6
・
__彼が無言なのは恐らく、そういった大きな感情が巡っているからなのだろう。
人って感極まると言葉が出てこなくなる時があるし、彼は自由への執着も可也強かったから…多分コレは中たっていると思う。
現に、彼の瞳は夢見る少年の様にきらきらと輝いている。
其れを見て、之は長くなりそうだと思い国木田さんに"少し遅れます"と連絡を入れておく。
スマホは何処から出したのかって?亜空間に収納する術式を使って、予めそこに入れておいた。
いつでもどこでも収納・取り出し可能。これぞ四次元ポケット。
そして、これだけ空を飛んでいれば民衆に気付かれそうなものだが…これまた術式で私達の姿は見えない様にしてある。
便利な術式達ですこと。…其の分の対価は辛いけど。
・
すっかり日の昇った、午前十時頃の横浜を一望する。
因みにゴーゴリ君はまだ飛び回っている。元気だね。
然し、…其れ位喜んで貰えたのなら私としても嬉しい限りだ。
私としても、真逆、ここまで楽しんでくれるとは思ってなかったので。
視線を彼から横浜に移す。
__改めて横浜を眺めて実感したけど…この土地は、世界は、本当に空気が澄んでいる。
…否、マフィアや黒社会が盛んな街を見て"空気が澄んでいる"というのは可笑しいか。
でも……呪霊がいないというだけで、こんなにも綺麗だとは。
彼方の世界__もう、前世…と云うべきか。
前世では偶にこうして上空から街を見下ろす事は多々あったが、いつと空気が澱んでいた。
負の感情の塊がうようよいたのだから当たり前ではあるが。
呪霊のいない世界。
__同じ特級の九十九さんや、傑が目指していた世界は、こんな所にあった。
呪力は全人類微かに持っている。が、呪霊は生まれない。術式を持つ者も私以外には存在しない。
変に感慨深くなっていると、彼が満足したのか帰って来た。
「いやぁ、貴重な体験をさせて貰ったね!」
「随分長かったね……あ、全然良いんだけど。でもそろそろ出勤しないと怒られそうだから戻らせてもらうよ」
液晶画面には国木田君との会話が映し出される。
彼からは"了解だ"と一言が届いていた。
……これが私ではなく治なら秒で電話をかけるだろう彼だが、私は真面目に働いている(時々サボるが)ので其れで終わった。
ベランダに降り、彼が足を床に付けた所で術式を解除。
どこか名残惜しそうに背中に目を向けていたが、其れも一瞬。直ぐに明るい笑みを浮かべた。
486人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Lara - 今日初めて見つけたんですけど好きすぎて一気に全話読んじゃいました!更新も気長に待っときまーす! (5月10日 21時) (レス) @page34 id: f21b034dc4 (このIDを非表示/違反報告)
ルウ(プロフ) - ウゥ……き、気長に待ってますよぉぉッ! (2月21日 19時) (レス) id: e1051b8db4 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - 又、ツイステは私もクルーウェル先生が大好きなのでそう言って貰えてとっても嬉しかったです。これからもずっと、よんこいちさんの活動を応援しております。2回にわたり長々と失礼しました。 (2月4日 12時) (レス) id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。よんこいちさん、更新についてきちんと伝えて下さりありがとうございます。私は、作者さんが使命感などのザワザワとした気持ちを持った状態でいられることは、私も経験があるので不安です。できればふわっとした気持ちで楽に過ごして欲しいです。 (2月4日 12時) (レス) @page34 id: 87bc4141db (このIDを非表示/違反報告)
トッテン - 作者からを読ませていただきました!私も中々手が進まない時よくあって気持ちめっちゃわかります…。この作品大好きなので何年でも待ち続けます!!アニメのマルソーの場面めっちゃ好きでしてこの小説はギルド戦で終わりにするという感じでしょうか🤔 (1月28日 10時) (レス) @page34 id: e12076433d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:よんこいち | 作成日時:2023年8月18日 19時