「それでも、好きです。」2【平野紫耀】

81 - 寒空の下で ▼ you side ページ31

《 you side 》





あの日を境に直接会うこともなく、平野くんは北海道へ遠征ロケに行ってしまった。





ラインは、お互いにキスの話題に触れることなく、普段通りの何気ない会話のやりとり。





すっごくもやもやしているのに、聞かなくちゃいけないのに、「直接会った時に聞く」なんて甘く考えていたわたしが馬鹿だった･･･。





はぁもう、平野くん･･･当分帰ってこないじゃん。





北海道に映画の撮影に行くだなんて、あの時は何にも言ってなかったのに。





　「平野くんの、ばーか。」





一ヶ月も会えないだなんて。





仕事中、ほぼ上の空になってしまい、休憩がてら飲み物を買いにオフィスから外へ出る。





　「さむっ･･･。」





空にはぼんやりとしたうろこ雲が広がり、11月に入った空気は冷たくて、つんと頬に刺してくるようだった。





いつも近くの自販機で冷たいココアを買うけど、今日はホットのボタンを押す。





ゴドンッ





鈍い音を立てて出てきたココアを取ろうとしゃがむと、





＿＿＿＿ ♪ ♪ ♪





ポケットの中のスマホが振動とともに鳴り響く。





･･･え、電話だ、誰だろ。





慌てて画面を見ると、そこには見たことのない電話番号が表示されていた。





〈 090-XXXX-XXXX 〉





明らかに見慣れない11桁の番号。





恐る恐る受話器のマークに触れてみる。





　「･･･も、もしもし？」

？『あ、もしもーし？Aちゃん？』

　「･･･どなたですか？」

神『俺です、神宮寺！神宮寺勇太！』

　「へぇっ？！！神宮寺くんっ？！」





着信の相手は神宮寺くんだった。





神『ごめんね！急に驚かせちゃって！』

　「う、ううん！びっくりしたぁ･･･。」

神『紫耀に聞いたんだ、Aちゃんの連絡先。すげー渋々教えてくれたんだけどさ！』





受話器越しに神宮寺くんのハハハッと爽快に笑う声が聞こえる。





　「･･･どうしたの？急に電話してくるなんて、何かあったの？」

神『実はさ･･･。』





.

82 - 寒空の下で ▼ you side→←80 - キスの理由 ▽ sho side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す