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名前を覚えた後、いつからか持ち歩き始めたメモ帳の1番はじめのページには、僕たちの芸名と本名が書かれた。
日本語と韓国語で書かれたそのページに、ジミンとテヒョンは並んでいるけど、1人1人のページにはその2人の名前がない。
「答えづらかったら言わなくていいんだけど」
『……?』
「ジミニやテヒョンイとはこういう普通の会話はした?」
『……、……』
「何か頼まれたり…何か楽しいことをして過ごしたり…」
『……せんたく、して、って』
あぁたしかに、テヒョンはよく自分のTシャツを直接手渡して、洗濯してと言っていた。
でもそれは、テヒョンがAのことを避け始める前のこと。
しかもAは硬直してしまうからなかなかTシャツを受け取れなくて、その状態を見てテヒョンが不機嫌になるまでがセットだった。
『…げーむ、しました』
「おっ、ゲーム?テヒョンイ?」
『……じみん、と…ほび…と』
「おぉ、ジミニか。テヒョンイもゲーム大好きだから今度やってみるといいかもね」
『……、……』
「ジミニもゲームは好きだけど、化粧品とか体にいい食べ物とか美容に詳しいよ。Aが使ってる化粧水とかもジミニが選んだものだし、センスがいいと思わない?」
あー、困らせちゃったかな。
言葉を探すように、視線がうろうろ泳いで、手に力が入っている。
ニコッと笑って起き上がって、ペンを渡した。
『……?』
「ジミニとテヒョンイのページ、作ってみるのはどうだろう?」
『…ぁ、…』
とてとて走って机からメモ帳を取ってくると、迷いながらも文字を書き始めた。
一生懸命に、それでも嬉しそうにペンを走らせるAの姿に感化されて、僕も歌詞ノートに言葉を紡いだ。
ひと通り溢れた文字を書き殴って、浮かんだ音が消えないうちに形にするためパソコンに向き合って必死に鳴らして。
ハッと気づいたときには1時間ちかく経っていた。
振り向くとAはソファーで僕のことを見上げていて、ん?と聞くと、渡したペンが返ってきた。
『…なむ、ありがと』
「うん、どういたしまして」
僕の集中が切れるまで待っていたんだろう。
Aが動いた気配は全くなかったし、机の上の物の位置は変わっていない。
こうやって頑張りすぎてしまうところも愛おしくて、ソファーに座ってAに膝枕をした。
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キムチゲル(プロフ) - なつきさん» わぁあ!嬉しいお言葉をありがとうございます!毎日読んでいただけてるなんて…!光栄です。ちょっと後半の構成を練っているので少し間があきますが、更新頑張ります! (2023年4月17日 19時) (レス) id: eaa77fda60 (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - たくさん更新嬉しいです〜!毎日のように1話から繰り返し読んでいます(^^) (2023年4月16日 19時) (レス) @page41 id: 95c8aadb34 (このIDを非表示/違反報告)
キムチゲル(プロフ) - 儚さん» 無事に読んでいただけて良かったです!飽きないとは…!とても嬉しいです!更新頑張ります! (2023年3月28日 11時) (レス) id: eaa77fda60 (このIDを非表示/違反報告)
儚(プロフ) - ありがとうございます!18歳以上の年齢認証をしたら無事作品一覧からreverseが閲覧できるようになりました!キムチゲルさんの作品は胸が苦しくなったりほっこりしたりと感情が忙しくなるので読んでいて飽きないです。いつも楽しませて下さりありがとうございます! (2023年3月26日 23時) (レス) @page25 id: b3dd7ca622 (このIDを非表示/違反報告)
キムチゲル(プロフ) - 儚さん» コメントありがとうございます!大好きとのお言葉、とても嬉しいです。別小説は、私の作品一覧から【reverse】とタイトルについたものになります。作品一覧への飛び方がわからなければ、トップページにリンクを貼りましたので、そちらからどうぞ。 (2023年3月24日 19時) (レス) id: eaa77fda60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キムチゲル | 作成日時:2023年3月2日 20時