． ページ33
ソクジニヒョンが言っていたように、Aは僕たちからの頼み事をこなしたとき、そしてそれを褒めたときに本当に嬉しそうな顔をするようになった。
目を見たままで笑顔ってのは少ないけど、俯きがちに口元を綻ばせるから、あぁ嬉しいんだな、と頭を撫でる。
小さな頼み事をしてたくさん褒めてやりたくなって、こうして作業室や部屋からのお遣いを作ることが増えた。
ホビとジョングクによると、その…夜の営みのときにもたくさん褒めて甘やかすとめちゃくちゃ可愛いらしいんだけど。
ほんのちょっぴり元気になった自分自身を抑えるように足を組み直した。
「Aは何をおかわりしたの？」
『…え、と…オレンジ、ジュース』
「ん、そっか。ここの美味しいからね」
『うん、…おいしい、です』
はじめは、僕たちの中に放り込まれたこの女の子に、危機感を持っていた。
マンネラインは予想通りに食いついて、ヒョン達は無関心で、残された僕とホビは欲を持て余してどうしようかと悩んだし。
日本語しか喋れないと思い込んでいたのもあるけど、得体の知れなさに僕たちの関係性を変えてしまう存在のように感じていた。
マイナス要素だけなら追い出すべきか、と思って試しに手を出そうとした。
使えないなら、僕たちに悪影響しかないなら、と思っていた。
わかったのは、俺はただの男で、Aはただの女の子で。
本当にただ、欲にまみれていた男と…、自分の役目を必死に果たそうとする女の子、だった。
「A、あのときは本当にごめんね」
『……？』
「初めて僕の部屋に呼んだとき、傷つけてしまったから」
『…、……きずついて、ない、です』
予想通りの返事に苦笑する。
思い出しただけで顔を歪めてしまうのに、強がり…とはまた違うか。
一種の呪縛、Aは自分の弱さや痛みを認めることが許されない世界で生きてきたんだろう。
また歌詞のアイディアが浮かぶ。
そんな自分も周りも、認めて受け入れられるようになるには、何が出来るんだろうか。
「怖い思いをさせたでしょ？とても震えてた」
『……、……』
「だから、そうさせてしまったことを謝りたいんだ」
どうしていいかわからない、って顔でモゾモゾ動きながら瞬きを繰り返すAに、ちょいちょいと手招きをした。
戸惑いながらも近寄ってくるAにキスをする。
うん、僕があげたリップは本当に効果テキメンだ。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 518人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
キムチゲル(プロフ) - なつきさん» わぁあ！嬉しいお言葉をありがとうございます！毎日読んでいただけてるなんて…！光栄です。ちょっと後半の構成を練っているので少し間があきますが、更新頑張ります！ (2023年4月17日 19時) (
レス) id: eaa77fda60 (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - たくさん更新嬉しいです〜！毎日のように1話から繰り返し読んでいます(^^) (2023年4月16日 19時) (レス) @page41 id: 95c8aadb34 (このIDを非表示/違反報告)
キムチゲル(プロフ) - 儚さん» 無事に読んでいただけて良かったです！飽きないとは…！とても嬉しいです！更新頑張ります！ (2023年3月28日 11時) (レス) id: eaa77fda60 (このIDを非表示/違反報告)
儚(プロフ) - ありがとうございます！18歳以上の年齢認証をしたら無事作品一覧からreverseが閲覧できるようになりました！キムチゲルさんの作品は胸が苦しくなったりほっこりしたりと感情が忙しくなるので読んでいて飽きないです。いつも楽しませて下さりありがとうございます！ (2023年3月26日 23時) (レス) @page25 id: b3dd7ca622 (このIDを非表示/違反報告)
キムチゲル(プロフ) - 儚さん» コメントありがとうございます！大好きとのお言葉、とても嬉しいです。別小説は、私の作品一覧から【reverse】とタイトルについたものになります。作品一覧への飛び方がわからなければ、トップページにリンクを貼りましたので、そちらからどうぞ。 (2023年3月24日 19時) (レス) id: eaa77fda60 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：キムチゲル | 作成日時：2023年3月2日 20時
