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Aが初めて泣いた日から数日後の夜、ヒョンは明日の仕込みをするからと言って、キッチンにこもり始めた。
まだ少し咳が出ていたAに手伝いをさせるまいと、ヒョンは「ユンギの作業を見守っててくれ。それが手伝いだ」なんてめちゃくちゃな理由でAを部屋に置き去りにした。
昨日の「ナムジュニの膝を頭で温めるっていう重要任務をしてくれ!」よりマシか。
クソ真面目な顔で言い切るヒョンに、ホソクは噴き出して、ナムジュンはポカンとした後に膝をバンバン叩いてキメ顔しやがって。
誰がどう見てもカオスな状況で、真剣に応えようと頑張るA。
マンネは顔隠してたけど、肩震えてんの知ってんだからな。
めちゃくちゃ笑ってただろ。
そして、今日ももちろん真剣に俺の作業を見守ってくれて、いる。
「…A、眠たかったら寝ろよ?まだ本調子じゃねーんだから」
『……だいじょうぶ、です』
フルフル首を横に振ったAは、俺と目が合うと、キュッと唇を真一文字に結んだ。
いやいや、頑張んなくていーよ。
…ナムはどーやって変な任務を終了させてこの子を眠りにまで導いたわけ?
俺、全然自信ないんだけど。
もうちょいマシな理由で部屋にいさせてくれよ、ヒョン。
仕方ない、と。
ヘッドフォンの片方をくるっと外側に回してAの片耳に当てた。
Aの手を引いて、ヘッドフォンを支えるように上から重ねる。
「これ、持ってて」
『……?』
もう片方は俺の耳に当てたまま、出来たばかりのビートを流した。
一旦切って、メロディーラインの候補をいくつか流すのを繰り返した。
ポカン、と。
驚いていた顔、輝いていく瞳が、純粋に嬉しかった。
そしてその至近距離で目が合って、不覚にもドキッとしたから、残り5秒で停止ボタンを押す。
「…どう?」
『すごい、です』
「……うん、ありがとう」
『ずっと、きいて、たい』
「ん…そっか」
評論家や監督の意見よりも嬉しい率直な言葉に、口角が上がるのを抑えられない。
やべ、俺いま、だらしない顔してる気がする。
『これ、ゆんぎ、が、つくった、ですか?』
「あぁ、うん、そうだよ」
マンネが教えた俺らの名前はアーティスト名で、ヒョンがテストしたときに俺のことは「しゅーが」と変なとこが伸びた名前になっていて。
「うん、正解だけど、ユンギね!」と訂正されて、敬称とかは難しいのかAはそのまま覚えたようで。
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キムチゲル(プロフ) - なつきさん» わぁあ!嬉しいお言葉をありがとうございます!毎日読んでいただけてるなんて…!光栄です。ちょっと後半の構成を練っているので少し間があきますが、更新頑張ります! (2023年4月17日 19時) (レス) id: eaa77fda60 (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - たくさん更新嬉しいです〜!毎日のように1話から繰り返し読んでいます(^^) (2023年4月16日 19時) (レス) @page41 id: 95c8aadb34 (このIDを非表示/違反報告)
キムチゲル(プロフ) - 儚さん» 無事に読んでいただけて良かったです!飽きないとは…!とても嬉しいです!更新頑張ります! (2023年3月28日 11時) (レス) id: eaa77fda60 (このIDを非表示/違反報告)
儚(プロフ) - ありがとうございます!18歳以上の年齢認証をしたら無事作品一覧からreverseが閲覧できるようになりました!キムチゲルさんの作品は胸が苦しくなったりほっこりしたりと感情が忙しくなるので読んでいて飽きないです。いつも楽しませて下さりありがとうございます! (2023年3月26日 23時) (レス) @page25 id: b3dd7ca622 (このIDを非表示/違反報告)
キムチゲル(プロフ) - 儚さん» コメントありがとうございます!大好きとのお言葉、とても嬉しいです。別小説は、私の作品一覧から【reverse】とタイトルについたものになります。作品一覧への飛び方がわからなければ、トップページにリンクを貼りましたので、そちらからどうぞ。 (2023年3月24日 19時) (レス) id: eaa77fda60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キムチゲル | 作成日時:2023年3月2日 20時