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〜p.18 ページ18

あれから分かった。


Aは傷ついた心を切り離すように、…涙を流す代わりに…音や感覚や味覚を失っていく。

そして、必ず僕にくっつきたがるから、その度に先生の痛い視線に耐えながら僕の胸に顔を埋めさせた。
落ち着くと調子を取り戻して勉強に戻ったり、そのまま寝てしまうこともあった。



先生は「抱き合うなら見えないとこでやりなさい」と突き放すようにして言ったけど、その視線には心配と優しさが混じっていると知っていた。

Aの教科書も、先生が新しいものを手配してくれた。


Aは目をまん丸にして驚いて、嬉しそうにくしゃっと笑ったのに、すぐに困り顔になった。



『あの、嬉しいけど、…お小遣いとかないし』

「余り物だからお金はかかってないわ。いいから勉強しなさい」

『んふふ、先生、…ありがとぉ』



Aは宿題も一生懸命頑張って、音が聞こえなくなったりペンを握っているのか分からない日があってもめげなくて。
卒業ギリギリで、落とした単位を取り戻した。

無事に卒業できそうだと嬉しそうにテストを見つめるAの笑顔を、先生が安心したように眺める放課後。


これまでの高校生活のどの瞬間よりも、大切な瞬間。






「先生…Aは、最近いつも耳が聞こえないみたいで、味がわからないから食欲もないのか、痩せてしまって」

「…そうね」

「僕は…何もできません」

「1つ言えることは、あなたがいなかったら、あなたと出会わなかったら、卒業できなかったということ」

「…ありがとうございます」



卒業までの間、あとは出席日数分を学校で過ごすだけになって。
Aは糸が切れたように保健室のベッドで眠る時間が増えて、起きていても僕の声は届かないことがほとんどだった。




"A、もう帰る時間だけど立てる?"


『んー…だいじょぶー。立て、…っ』



ベッドから立ちあがろうとしてそのまま床に尻餅をついてしまって。
困ったように笑って僕に手を伸ばしたのに、フッと意識が途切れてしまった。



「っ、Aっ!」


ベッドに頭をぶつけそうなところ、ギリギリで受け止めた。
そして見えてしまった、胸元の赤い痕。


ひっかき傷に混じる行為の証。


どうして、…A、どうして。



〜p.19→←〜p.17



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キムチゲル(プロフ) - #ピーチパイさん» ピーチパイさん、こちらでもありがとうございます!嬉しいです! (2022年9月20日 23時) (レス) id: eaa77fda60 (このIDを非表示/違反報告)
#ピーチパイ(プロフ) - 新作お待ちしてました。キムチゲルさん、好きな作者様なのでとても嬉しいです。応援してます! (2022年9月20日 16時) (レス) id: 45ed2b8755 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:キムチゲル | 作成日時:2022年9月20日 14時

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