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言葉がすぐに出てこなかった。
僕の方は見ずに夜景を見つめたままのAさんの瞳が、より一層光っていた。
『10年も、ほったらかしで…向き合えていなかったんですが、勇気を出せたのは…テヒョンさんのおかげです』
TH「僕は…何も…」
『…互いに、大切な…人でした。私にとってのあの子も、あの子にとっての…私も』
TH「…マネージャーとして、ですか？」
『……いつしか、そういう枠組みは越えて、いました。私がマネージャーという仕事を選んだのはあの子を支えるためで、…そして、このままではダメだと、彼女のもとを去りました』
Aさんの両手はテーブルの上で小刻みに震えていた。
落ちそうで落ちない下瞼に溜まった雫。
『あの子が亡くなったと聞いたのは、…私が彼女と離れた1年後でした。アルコールと薬に溺れて……、…こうなるかもしれない、と…どこかで、わかっていたのに』
もういい、話さなくていい、と止めることもできた。
でも、僕はしなかった。
『彼女の手を離したのは、…彼女を見捨てたのは、紛れもなく…私です』
最後の1口のエスプレッソを残したまま、Aさんは立ち上がった。
『…遅くなってしまいました。帰りましょう』
TH「……はい」
いつも通りのペースで歩くAさんとは反対に、僕の足取りは重くて、鉛のようだった。
ゆっくり、ゆっくり、Aさんの話したことを噛みしめるように歩く僕は、バンの運転席から待つAさんの顔を見ることができなかった。
僕の家に向かうまでの道のり、車内はとても静かで、さっきよりも近い夜景が過ぎ去っていく光景をぼーっと見ていた。
ふと、何でもない通りで車が止まって、バックミラー越しにAさんを見た。
『…そういえば、日本に帰る日、…うちに来ると、言ってましたが…』
Aさんが苦しそうに、悲しそうに、困ったように笑う。
僕は咄嗟に目を逸らした。
ここは、Aさんの家の近くの通りだった。
『……出しますね』
お疲れ様です、と言ったAさんがどんな顔をしていたか、覚えていない。
僕に話してくれたことが、僕への線引きだったのか、Aさんにとっての線引きだったのかは、分からない。
だけど、Aさんは僕らの後輩グループの日本ツアーに付くから、と。
僕らの元を離れていった。
．
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キムチゲル(プロフ) - とりむねにくさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！励みになります！ (2022年9月27日 7時) (
レス) @page46 id: eaa77fda60 (このIDを非表示/違反報告)
とりむねにく(プロフ) - キムチゲルさんのお話大好きです。陰ながら応援しています✨ (2022年9月26日 19時) (レス) @page47 id: ef541684ad (このIDを非表示/違反報告)
キムチゲル(プロフ) - リアさん» 素敵なお言葉ありがとうございます！明日からは毎日できないかもしれませんが、バンタンの沼にずぶずぶなので、自分のためにも頑張ります笑 (2022年9月9日 21時) (レス) @page27 id: 5ec1a8499c (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - スクロールする手が止まらないくらいとても素敵なお話だと思います！毎日更新ありがとうございます😭😭 (2022年9月9日 19時) (レス) id: ee9fb3ed4d (このIDを非表示/違反報告)
キムチゲル(プロフ) - ＃ピーチパイさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。更新頑張ります！ (2022年9月7日 10時) (レス) id: 5ec1a8499c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キムチゲル | 作成日時：2022年9月5日 23時
