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僕は子どもみたいに拗ねてしまって、Aさんの呼ぶ声も無視してエレベーターまで走った。
筋力が落ちたと言って、痩せた体を隠して退勤の時には疲れきってて汗もかいてて。
僕に、荷物くらい持たせてくれたっていいじゃないか。
頼ってくれたって、いいじゃないか。
早く車に行きたい僕の気持ちとは裏腹に、エレベーターが来るまでの間にAさんに追いつかれた。
Aさんは何でもないように、いつものように僕よりも先にエレベーターに乗って、開くボタンを押したまま、なかなか乗ろうとしない僕をじっと見つめた。
『…どこか寄りたいところがあるんですか？』
TH「…それは、…ないです」
『…では、私の寄り道に少し付き合ってくれませんか？』
TH「え…」
Aさんからこんなお誘いが来るのは初めてで。
もちろん！とフロア中に響く大きな返事をしてしまった。
苦笑いするAさんに引き寄せられるように足が動いて、ニヤニヤしながら距離を詰めた。
TH「で、どこですか？寄り道したいところって」
『ここのカフェです。はい、着きました』
どうぞ、ってエレベーターを降りたけど、まさかの社内カフェ…。
僕はもっと、もっとさぁ…。
『ここ、眺めがとてもいいんですよ。何頼みますか？』
TH「…そこは僕が出しますよ。Aさんは何飲みますか？」
『寄り道したいと言ったのは私なので、自分の分は自分で出します』
TH「そうじゃなくてっ！…そうじゃなくて、Aさん、わかってよ…」
『……ではお言葉に甘えます。エスプレッソをアイスでお願いします』
Aさんの言動に気持ちが上がったり下がったり、ジェットコースターみたいな自分に辟易した。
カフェの店員さんが驚いてときめいている顔に、リップサービスする気にもなれない。
TH「はい、エスプレッソです」
『ありがとうございます』
TH「…ここ、よく来るんですか？」
『えぇ、事務所に来たときはほぼ毎回来ています』
TH「そう。僕は初めて来ました」
夜景を映す瞳の方が、眺めよりも綺麗なのに。
キラキラと光る瞳は僕の方を不思議そうに覗き込んで、穏やかな笑みを携えたまま夜景に戻った。
僕も何も言わず、ただただ、Aさんの横顔を見ていた。
閉店の時間のアナウンスが鳴って、どこか哀愁漂うミュージックが流れる中で、Aさんはポツリと言葉を落とした。
『…日本で、あの子のお墓参りをしてきました』
．
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キムチゲル(プロフ) - とりむねにくさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！励みになります！ (2022年9月27日 7時) (
レス) @page46 id: eaa77fda60 (このIDを非表示/違反報告)
とりむねにく(プロフ) - キムチゲルさんのお話大好きです。陰ながら応援しています✨ (2022年9月26日 19時) (レス) @page47 id: ef541684ad (このIDを非表示/違反報告)
キムチゲル(プロフ) - リアさん» 素敵なお言葉ありがとうございます！明日からは毎日できないかもしれませんが、バンタンの沼にずぶずぶなので、自分のためにも頑張ります笑 (2022年9月9日 21時) (レス) @page27 id: 5ec1a8499c (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - スクロールする手が止まらないくらいとても素敵なお話だと思います！毎日更新ありがとうございます😭😭 (2022年9月9日 19時) (レス) id: ee9fb3ed4d (このIDを非表示/違反報告)
キムチゲル(プロフ) - ＃ピーチパイさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。更新頑張ります！ (2022年9月7日 10時) (レス) id: 5ec1a8499c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キムチゲル | 作成日時：2022年9月5日 23時
