. ページ9
何故そんなカフェが一瞬にしてホストクラブのような場所に変わるのか?
「……はぁあああ、疲れたぁ…… Aちゃん、、助けて」
『…疲れる要因は全て自分にあることをお忘れなく』
それは、彼がパーフェクトヒューマンだからだ。
発注ミスの時と同じぐらいの数のラッピングされたチョコを後ろに、ぐでんとテーブルに寄りかかる店長。
私がそう突き返すと、変な唸り声を出して力尽きた。
「僕の連絡先ってさぁ、……そんな貴重なものかな。
…情報系の詐欺グループに売ったら高く売れるとか、?」
『……んなわけないですよ。 』
当の本人は接客にここまで労力を使うと思ってなかったのか、意味不明なことをいいだすし。
「……それに、僕自身人の個人情報むちゃくちゃ握っちゃったし。」
彼の横に置かれている大量の紙切れや手紙は全部、連絡先が書かれた紙だそうだ。
軽く30人ぐらいの電話番号を持っている彼は、その紙を燃えるゴミとして捨てようとしている。
「……つかれた。」
やっと顔を上げたかと思えば、頬杖をついてはまたぐでんとなって。
その向かいで、私の汗ばんだ手はもぞもぞとタイミングを見計らっている。
……どうしよう。あげるべきかな。
こうなることを予想していたのにも関わらず、なぜ私は作ってきてしまったのだろうか。
『…要ります?これ、』
……チョコ。
一か八かで恐る恐る隠し持っていた紙袋を彼の目の前に置くと、
さっきまで死んでいたのにがばっと起き上がってすぐさま姿勢をよくする。
「え、なにこれ、…… Aちゃんが作ってくれたの?」
『…まあ、はい。でも……あんだけ貰ってたら流石に要りませんよね。』
「いるよ!!いる。 ほしい、頂戴?」
出してからやっぱり、と躊躇ったら、すごい速さで引く手を止められる。
思ったより食いつかれて、というか奪われて放心状態。
そうか、彼は砂糖でできた人間だったな。
……チョコが何個あろうと、店長からしたら大歓迎なんだった。
「…ありがとう、すっごく嬉しいよAちゃん。」
ふにゃりと笑って大事そうに袋を抱える店長。
それになんだか、いたたまれない気持ちになって自然に目をそらす。
「…そう、僕からもプレゼントあるんだけど……」
『……え、』
……これが俗に言う、逆チョコってやつ?
立ち上がってどこかへ行ったかと思えば、何かを持ってくる店長。
「happyValentine〜」
『わ、 すご……』
オシャレな紙袋の中には、すごく綺麗なネックレスが入っていた。
「つけてあげるね、」
……今年は最悪なバレンタインデーになるはずが、どうやら最後の最後にそうじゃなくなったらしい。
761人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月紗? | 作成日時:2022年10月16日 23時