一人バイトの苦難 ページ7
「ねー、Aちゃん。
さっきエプロンに割引のシール貼ってたの気付いた?」
『……いいえ、初耳ですが。』
「…朝から貼ってたんだけど」
『……』
自分でやっておいて焦った顔、かと思えば笑いを堪えきれてない顔をしているこの男の名はホン・ジス。私のバイト先の店長をしている人である。
私のバイト先の唯一の人間であり、砂糖に侵略されてるくせにイタズラ好きな店長だ。
おかげさまで日々悪戯をされる上どろっどろの糖分を注入されるので
バックれてやろうかと思いながらも働いている。
だが”1人だけのバイト”としての苦難は、それだけではない。
冒頭の会話は、退勤直前に明かされたことである。
……その日謎に私のどこかを凝視して帰っていく人が多いと感じていたのは、そのせいだった。
なんか本当に”…何だこの人?”みたいな目を向けられていた。
…こういうことが、このバイトでは日常茶飯事として起こってしまう。
ある時は私のマグカップと自分のマグカップを間違えて私に激甘ホットチョコを飲ませ
ある時は掃除している時に競走だなんて言ってモップを持って走り出す。
ある時は急に私を厨房に押し込み
ある時は変なことを言って私を惑わせる。
.
いつも またこの人は……とは思うけれど
スルーしとけばだいたいなんとかなるということを知り相手にしないことにした。
だが、これを全て1人で受けていると考えると
嫌がらせとして訴えられるかどうかギリギリのラインまで行くことが可能だ。
1時間刻みで遊ばれている私は一体1人のからだでどれだけのものを背負っているのだろうか。
女性のお客さんにガンつけられてたまに押しのけられたりするのも(私店員)ある意味店長からの嫌がらせだ。
だからといって、まあ四六時中そんな小学生みたいなことをしてる訳では無い。
ちゃんと店長としての仕事は後回しにしないし、基本ゆっくりしてる時は甘いものと一緒。
それに、なんだか……
「…僕の顔、なんかついてる?」
『……いや、すみません』
「ははっ、そう? もっと見てくれてもいいんだよ?笑」
『…毎日見るじゃないですか』
「…ほんと、クールだね〜」
なんだか、甘い。
『……誰のせいだと』
「、僕のせい?笑」
そうやって、微笑みながらテーブル越しに肘を着いてこちらを見てくる店長
ここにバイトに来てから糖分の摂取量は、日々カンストしている。
それを全部1人で担っている私は、店長に毎日悩まされるのだった。
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作者名:月紗? | 作成日時:2022年10月16日 23時