White sugar Black coffee (ページ6)

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発注ミス、なのに…… ページ6

『…バレンタインも近く？』

「……うん」

『自分も好きな食べ物で？』

「……」

『余裕もあったから？』

「、はい」

『たくさん買っちゃったと？』

「……そうです。」

ある日、出勤したらカフェがお菓子の家になっていた。

『……沢山の意味って、超えるもんじゃないんですよ。』

板チョコ300枚、ホットケーキミックス40kg、牛乳が1000L、卵は軽く鶏小屋が無くなる程度に。

……ある意味、お菓子の家(笑)だ。

「……だよねぇ、、…反省します、、」

何故彼は1回の発注でこんな爆弾を仕入れたのだろうか。

それは全てノリとタイミングと気分で構成されている。

バレンタインが近いからいつもより多く生産しようと試みた

最近はすごく余裕があった

なんかすごく甘いものを愛してしまった

これだけで彼は牛一頭と鶏小屋を消すことができる。

『…粗末にはできませんよ。』

「……そこは流石に、店長やってる身分として分かってるよ。」

もはや業者がどっちか分からないほど仕入れてしまったが、どうやら店長には考えがあるそうだ。

＿＿＿＿＿

『、、店長、まさか』

「Aちゃんも手伝って～～。流石にこの量一人じゃ無理～泣」

……予想はしていたものの、おぞましいものであったためあまり考えないでいた事が

現実へと近づいているという事実に動揺を隠せない。

まさか、まさか一日であの材料の3分の1をカップケーキにするなんて。

『……今日、一日でそれ全部売るつもりですか、、？』

「そうだよ。あとの3分の1はバレンタイン、もう3分の1は普通に使う！」

『(効率どうなってんだよ……)』

今日も今日とですごい発言をする店長は、黙々と生地を作っている。

とりあえず言われた通りオーブンの準備やカップに生地をいれるのを手伝ったりしながらも、並行してお客さんの対応をしていると頭がおかしくなりそうだった。

＿＿＿＿

『…お疲れ様です、店長』

気付けば夜になっていて、退勤時間はとっくに過ぎていたけれど

「うん……ありがとう」

ヘロヘロになって、カウンターに突っ伏して動かなくなった店長を見送ることは流石に出来ず。

ホットミルクを出すと、ノールックで持ち手に辿り着いて一気に飲んだ。

……出来たてで、むちゃくちゃ熱いはずなんだけどな。

「、、廃棄にはさせないって、約束守ったよ」

『……本当に、そうですね』

店長は、約束通り大量のカップケーキを1時間で全て売った。

……1人で大通りに出ただけで、それはもう素早く。

『顔って、凶器だ。』

「……何の話、、？」

店長の外見の良さと、商売の上手さが際立った一日だった。