反射神経、回れ右 ページ48
どう転がっても見てなかったなんて言えないし
それに ここから逆戻りして走り去るにしても、私はこの後のバイトをどうすればいいんだ
中にいるはず、そして少しばかり強くなってきた雨の中で私の名前を呼んだ店長の声が聞こえた気がした
…でもなんでか反射的に回れ右して とりあえず濡れた足で走ってる
いや別に、誰かが人を殺してる現場を見た訳じゃないんだし
店長に彼女がいないなんて言う保証は一切なかった訳で
今こうして意味もわからずあそこから逃げてると だんだん正気に戻ってくる自分もいて
この胸の当たりが刺されたように痛いのは
どこかで、店長は私を特別扱いしてくれてるなんて勝手に思ってたから?
近くに居るのは私だけだなんて、勘違いしてたから?
そんなの全部分からないけど、気づくならもっと早く気づくべきだった
店長に可愛らしいネックレスを貰ったからって
頭を撫でられたからって
”可愛い”だなんてリップサービスすら真に受けて
変に期待値をあげてたのは 全部私だ
.
何でも共有したがったり、私がなにか作って出したりするとすごく喜んでくれたのは
”私だから” じゃないんだ
別に、自分が寄れる場所があれば誰だって良かったのかも
”貴方と一緒にやっていきたい”だなんてお誘いを受けなくとも
ただの嘘だって受け流していればこんなことにはならなかったはず
でも、他に愛する人がいながら
なんの感情を持たずに私に触れてきていたのなら
……それってどう考えても、いけないことでしょ
.
私といった場所だって、 くれた花束だって
なんとも思わずに共にしてたなんて
今になって思うと全ての感覚が怖くなってくる
……って、結局は被害者ヅラな自分に嫌気がさす。
雨なのかなんなのか分からないけど視界がぼやけてきて ついには傘を差してる意味すらないぐらいに体が冷たい
踏み込む度に水をふむような感覚 だんだん息が切れてきて自分の呼吸の音しか聞こえなくなって
立ち止まって息を整えると、後ろからする大きな水の跳ねる足音と、”
……別に、多少やましい事だからって
追いかけてまで来なくていいでしょ
、いや
こんな馬鹿みたいな鬼ごっこを、始めたのは私か。
入り組んだところの道を一直線に出れば もうあと少しで大通り
何から、何のために逃げてるのかすら分かってないのに
近づいてきた音に”逃げなきゃ”って思ってまた足を進める
「__!!」
やっとの事で細い道から抜け出せたと思えば
大きなクラクションの音と共に 真っ白な光が私を照らした
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作者名:月紗? | 作成日時:2022年10月16日 23時