White sugar Black coffee (ページ41)

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帰りたくないページ41

お昼ご飯を食べてから、お店を出ると実はもう帰るんじゃないかなんて空気を感じた。

なぜかって、私達はただ映画館に行く事しか約束してなかったから

映画を見終われば、すぐに解散ってなってもおかしくない。

そんな事実に、少しばかり遅れて寂しさを感じてしまっている自分がいる。

「…これから、どうしようっか？
どっか寄っていく？」

『……』
珍しく二人の間に沈黙が出来たと思いきや隣にいるジスさんも少し俯いて見えた

……あれ、こんなにお葬式ムードだったっけ。

なんて、考えてるくせして口からは何も出てこない。

何か、言わなきゃ

でも、どうしたら

ぐるぐる同じ言葉が重なってはまた重なって、頭の中ではち切れそうなぐらい焦ってる

『…その、』
「…やっぱり今日はもう帰ろっか。結構歩いちゃったし、足もしんどいでしょ？」

まるで空気がジスさんの声以外を捉えないようにしたみたいにそんな言葉が私の中でギリギリ音を立てて自分を責めていく

駅がある方と同じ方へ進んでいってるからこそもうタイムリミットはすぐそこまで来てる

……言わなきゃ、早く、
ジスさんがもう、帰っちゃう

『……まだ、』
「うん、」

その優しい声で聞き返されることに弱いのに

余計に喉元につっかえる言葉が戻っていったり、出てきたり

『……まだ、
……一緒に居たい………です』

それでも絞り出すようにしてそう言えれば、ジスさんは1度、目をまん丸にして足を止めた。

「それ、ほんと？」

『……あいや、ただの我儘なので…聞き流してください』
言い終えて迷惑な事を言ったと後悔しても、遅いのに

「……いいや。この耳でしっかりと聞いちゃったな」

流せといって流してくれる人じゃないって知ってるのに

だんだん顔に熱が集まっては、恥ずかしくてジスさんの方が見れなくなるから

嫌そうな顔をしてるのか、そうじゃないのかなんて分からないままで

「Aちゃんがそう言うなら仕方ないね〜。まだ一緒に居よう」

了承してくれたはずなのに、居心地良くない声色

「はは笑嘘だよ。こっち向いて？」

そう言われてから、からかわれてる事に気づいた。

大人しくジスさんの方を向くと、「僕もまだ帰りたくないって思ったところ」と 1ミリも恥ずかしさなんて無いまま微笑んだ。

『……どこ、行きますか？』

ジスさんほど器用じゃない私は、スルーするかのように話を変えたけれど

「何処だったら一緒に居てくれる？」

なんて、あたかも自分が一緒に居たいってねだったみたいに笑って悪戯に聞くジスさん

私はまたその甘さに、呑み込まれていくだけだった。