強引パスタ ページ40
『美味しい……。』
「んふふ、美味しいね〜」
映画館を出た時にはもうお昼時で、今はジスさんおすすめのパスタ屋さんに来ている。
私はお店でパスタを食べた事があまりないから、”人気no.1”という文字につられてクリーム明太子パスタを、ジスさんはお気に入りらしいカルボナーラ明太子を頼んだ。
食べてみれば思わず美味しいと声が出るほどの美味しさで、こんなにもパスタって美味しいんだと超感動。
明太子と太めのパスタの相性は見くびっちゃだめだな……
フォークにクルクルとパスタを巻き付けて、口に運ぶ時にふと向かいに座っているジスさんを見ると
『…ど、どうかしましたか?』
手を止めて私の方を見ながら、楽しそうにクスクス笑っていた。
「いや、凄く美味しそうに食べるなぁ、って思って笑」
なんて言って、遅れてパスタをクルクルする仕草をするから。
『…すごく美味しいです、初めて食べましたこんなに美味しいパスタ』
恥ずかしさを覚えつつも、率直に今の感想を伝える。
そうするとジスさんは、”ここに来てよかった〜”なんて嬉しそうに笑った。
……お昼ご飯もケーキ食べそうだとか思って、ちょっと身構えていた数十分前の自分を殴りたい。
「もう張り切ってうちもパスタ出しちゃう〜?」
『あはは笑、スイーツカフェなのに?笑』
「いいじゃん、サブメニュー♪」
お兄さん、それって本当に大丈夫なの?
.
「Aちゃん、」
『はい、なんですか?』
しばらく2人でもぐもぐしていたら、ふと名前を呼ばれて。
なんだと思い顔を上げると、”パスタちょっと交換しない?”とのこと。
確かに、ジスさんが食べているカルボナーラの方も気になってはいたところだったから、いい案だと思って目の前のお皿を差し出したのだが。
「あー」
そこには可愛らしく口角のあがった口を、ぱっと開けて待つ赤ちゃんのような男性がいて。
『……赤ちゃんですか。』
さっきのドリンクの事もあって、そういう接触に敏感になってるからこそ率直な感想を。
当の本人は”なんで”ってちょっと拗ねてるけど。
『自分で食べてください……っん、』
完全にジスさんを跳ね除けることが出来たと思いきや、口にパスタを突然突っ込まれる。
ほんとにこの人はなんで喋ってる時に口に食べ物を入れてくるんだ。
毎回むせそうになる私の事も考えてくれ………
って思うけど、貰ったカルボナーラが美味しくてつい黙ってしまう。
「ほら、Aちゃんもちょーだい?」
強引なことをしてるって分かってるクセに、試すように笑うジスさん。
やっぱこの人には勝てないな…なんて、パスタをくるくるしながら思った。
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作者名:月紗? | 作成日時:2022年10月16日 23時