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が、ただ少しばかり気が散ったシーンがふたつだけあった。
『……?』
「Aちゃんにはまだ早い。」
『えー……』
1つ目。多少際どいシーンが流れてくる度真顔で目を隠してくるジスさん。
相手が流石LA出身の方だからとはいえ、そういうシーンが来る度に「うわ……」って小声で感嘆してるのか引いてるのか分からない言葉を呟いていた彼よりか私の方が大人しかったと思うのだけれど。
少しでも私が清純であって欲しいという(?)彼なりの意思にも感じたので抵抗はしなかった。
2つ目。シェアしたコーラ。
先程、軽々しく飲み物を共有しようと提案した私だが、それは少し間違いだったのかもしれない。
「んっ。」
『……?』
映画を見ている最中、右隣がもぞもぞ動き出したと思ってそちらの方を向くと
ドリンクホルダーがあるイスのサイド、いわゆる私たちの境界線を乗り越えて何かを欲しがっているジスさんが結構至近距離にいて。
なんだなんだと見ていると、スクリーンから反射した光でキラキラ映ってみえるその目で、”コーラ^^”と訴えてきた。
……あぁ、コーラですね。はいどうぞ
そう思いながら、カップで飲んでもらおうと私が口をつけたストローと、上のフタを外そうとした瞬間に
『……?!』
ジスさんは外そうとした私の手を抑える形でカップを持って、そのままストローでコーラを飲んだ。
飲みたかったものが飲めたジスさんは満足そうにニコニコ笑って、ありがとうって口パクで言ってから何事も無かったかのように、私を置いて映画に見入ってしまった。
…やっぱり、私が言った”気になる事”という意味は伝わっていなかったらしい。
他人と同じものに口をつけるという事に、少なからず抵抗があるだろうと思って自分なりに気遣ったつもりなのだが……
私と一緒に現実世界に取り残されたそのコーラとアイコンタクトをしつつ
これから私はどうやってこれを飲めばいいのか、そんな難問に思い切りぶつかった。
そのまま飲むのもなんか恥ずかしいし、私が逆にストロー外して飲むのも失礼だし……
そう思っては結局、氷が全て溶けてしまって コーラ自体なんの味もしなくなるまで考え込みそうだったから、諦めて残りはジスさんに飲んでもらった。
嬉しそうにまた軽く感謝しては、気楽に残り半分のコーラを飲むジスさんを見て、また心が揺らぐ
…ほんと、何も気にしない様な人だ。
そう呆れる面もあり、少しばかり気を許されすぎている気もしてモヤっとしたけれど。
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作者名:月紗? | 作成日時:2022年10月16日 23時