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僕が意識のない間で2人は、どれぐらい距離を縮めたんだろう
時間がかかるこんな綺麗なものを、ジョンハンは何を考えて作ったんだろう
Aさんは、このキーホルダーの特別さを、どれほど分かっているんだろう、
モヤモヤが重なりに重なれば、気が狂いそうになる。
いつもは食べているチョコレートも、クッキーも
全部焦がしたように、苦くてくるしい。
何故かなんてわからないけれど、とにかくくるしい。
僕の目の前でずっと、誰かとメッセージを交わしているAさんを見るのも
仕事が忙しいとかでパタリと来なくなったジョンハンの意図を勘ぐるのも
ほんと、嫌になるぐらい苦い。
花の名前を聞いてくるAさんを見てもう、察するしかなかった。
もう、ジョンハンといい感じなんだって。
だから、性格の悪い僕は教えたくないなんて言う気持ちと、僕から言う訳にはなんていう気持ちで
冷たく追い払ってしまった
……ごめんね、Aさん。
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僕は君に独占欲を抱いてるのかも。
「Aちゃんはジョンハンが好き?」
結局、耐えられなくなってAさんを問い詰めた。
上から見下ろすAさんは、こんな時にでもどこか愛らしい
切れ長で鋭そうに見えるその目は 自分より大きい者に連れ去られそうになっている子猫のように
子供で、仕方ないぐらいに潤んでいた。
『私、……ジョンハンさんの事、好きじゃないですよ、
…それに、…ネックレスを最近着けていないのも、理由があって…… 』
『…前、お客さんに店長からの頂き物だって気付かれてしまって
それから、、ちょっとだけトラブルになったんです。……だから、
…お互いの為にもと、…最近は付けてませんでした。』
そんなハッキリと差し込んだ言葉に、どれほどこの濁さない性格に感謝しただろう
僕の心にかかったモヤの全てが、一つ一つの声によってかき消された。
……全ては、ただの偶然ってことにしちゃうけど、いいのかな
都合よく捉えて、これからも君の手をこうして掴んじゃうかもしれないよ
…色目を使って波のように押し寄せてくる何人ものお客様なんて必要ないから
ひんやりとして深みのある、君の魅力だけを包ませて。
気分が一気に良くなっちゃってから再び見下ろしたAさんの肌は、ポカポカしていて
……あぁ、本当に
本当に僕は、この人にカフェを共にして欲しいと頼んでよかったと思った。
甘い物でも、君がなきゃ始まらない。
君という名のコーヒーを、僕の中で溶かさせて。
…それが、僕の幸せなんだから。
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作者名:月紗? | 作成日時:2022年10月16日 23時