中毒の答え合わせ ページ23
『こんばんは〜…』
「こんばんはー」
……うん、予定通り今日も目は合わない。
初回よりか慣れたものだ。 というか、バイト先の店長ってこれぐらいが普通なのかも。
「はいどうぞ、外寒かったでしょ」
『……、、あぁ、ありがとうございます』
今日はカフェオレ付き…？…だ。…なんか、久しぶり。
こう思うと、店長の優しさってやっぱり 当たり前じゃなかったんだなと今になって実感する。
少しだけふーっと冷ましてから飲むと、やっぱり熱で溶けてしまうようなぐらい甘いミルクが、コーヒーの掠れた香りと一緒に喉を通った。
背筋に冷たいものが渡るように、ぶるっとなって。
脳の大事な部分までぼんやり、甘さでふやけていく。
……これだから、甘いものは苦手だ。
本当に、苦手だ。
自分のはっきりとした思考まで、全てかっさらってしまう。
欲に引きずって、駄目にされてしまう。
この病みつきになる甘さが、くどさが 本当に好きじゃないのに
なんでか、私はもうこれに慣れているらしい
既に半分も飲み干してしまった。
……さっきした嫌な予感は、これだったのかもね。
1口だけでかさがすごく減ったマグカップを覗いてから、どこか嫌になって仕事に集中した。
＿＿＿＿＿
気づけばバイトが終わる時間になっていて、閉店作業を黙々と手伝う。
さっきの動揺もあったからか、心なしかすごく急いでいる自分がいる。
……店長の優しさに、このままじゃ引きずり込まれてしまいそうで。
わたあめみたいな笑顔も、優しい振る舞いも全部当たり前のようだと思えるぐらい
おだやかな店長に、既に感覚を狂わせられた気がする。
動揺することも、今の現状に少しでもひっかかることも 無くさないと。
考えていないと自分では思いつつ、正直に言うと既に頭の中はパニックだ。
そう早く帰ろうと動きが早くなった私の手に、誰かが手を重ねた。
『っ、』
誰か、なんて
お店にいるのは私と、もう1人
「どうしたの？そんなに焦って」
店長しか、居ないのに。
『…あぁ、すみません 雑でしたね』
「……ううん、そういう事じゃないよ
焦って、今にも逃げ出したそうだから訊いてる」
さっきまで何も喋らなかったはずの店長は、そういって重ねた私の手を握ってから 顔を覗く。
目の前に移る大きくはっきりした瞳が、何もかも吸い込むように私を驚かせる
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作者名：月紗? | 作成日時：2022年10月16日 23時
