温かい魔法のほんじゃすカフェ ページ11
私がそう言うと、ぱあっと明るい笑顔で”良かったです”と微笑む。
そのあとはちょこんと私の向かいに座って、じーっと私を見つめていた。
『なんでこんな奥まったところに…こんなカフェが?』
それに痺れを切らして、聞きたかったことを先に伝えると
その男性は少し考えるようにして口を開いた。
「作れたところが、ここしか無かったんです。
…良い土地はみんな埋まっちゃってて。笑」
そうやって恥ずかしそうにするその男性は、どうやらひとりでこのカフェを経営しているようだった。
「でも、不思議なんですよね。
お客さんなんか来ないって意識でいつも経営してるのに、…毎日誰かがやってくるから。
どこか引き寄せるのかも〜、なんて思うとやっばり 拠点を移すの辞めたんです。」
『…私も、気づいたらここにたどり着いていて。凄く温かくて助かりました。』
彼も違うところに移ろうとは思ってたみたいだが、そういうジンクス的なのを感じて辞めたという。
私もどこか、この店に吸い込まれたような気がして 否定なんてしなかった。
お礼を伝えると、”こちらこそ、丁度寂しかったので温まりました。”とまた目を細める。
その仕草にふと、さっきの不安から報われた安心感が今になって溢れ出てきて
ぶわっと視界が滲んでは、その場で少し泣いてしまった。
「……大丈夫ですよ。」
良く考えれば、夜の11時に突然と店にやってきて
メニューにもないスープを作らせた挙句、泣き出すだなんて大迷惑だ。
なのにその男性は、何も言わずに向かい側から隣まで来て肩をさすってくれた。
どこか慣れたように、こんな出来事が初めてじゃないかのように。
『…すみません、』
「謝る必要なんて何一つないですよ。…焦らないで。」
必死に涙を止めようとそう目を擦る私の手を取って、真っ直ぐな目でそう言われる。
それにまた、苦くてボロボロになった心に甘いホットミルクを注がれたようだった。
『……すごく、本当に落ち着きました。ありがとうございます。』
彼の言葉で溶かされた後、そう今度は私から真っ直ぐ見ると
また優しい笑顔で微笑んで、ゆっくりと頷かれる。
「…お名前、聞いてもよろしいですか?」
次は少し顔を強ばらせてから、そんな事を聞いてきた男性。
『……ミン・A…です。』
「Aさん、僕はホンジス、っていいます。
その、もし、良ければなんですが……」
途端に緊張した顔をするものだから、私も緊張して次の言葉を待っていると
「僕と一緒に、ここで働きませんか?」
予想以上の、言葉が返ってきた。
761人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月紗? | 作成日時:2022年10月16日 23時