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「……」
『……』
.
梅雨が明けて、暑い日差しが私たちを覆う
青空の下で少し照った石の表面が、出迎えてくれた。
私はお花と和菓子を、ウォヌは線香と掃除用具を手に持ち目の前で立ち止まる。
2人で手を合わせて、目を瞑って。
再び目を開けた時に、ふと隣を見ると
同じように私の方を見たウォヌの優しい瞳に、小さく私の姿が映った。
何も声に出さず、少し片方の口角を動かして下を向いてからバケツを地面に置いて。
「……わざわざ来てくれてありがとう。」
そういいながら、小さいゴミなどを袋に詰めていった。
『ううん。…当たり前だよ。』
私はその横で、お花を花瓶へと移す。
---
__ウォヌのおばあちゃんは、ウォヌが私に別れを告げた数日前に既に亡くなられていた。
「……俺には、Aとおばあちゃんしか居ないのに」
理由を話してくれた時にそう呟いた彼は 不安でたまらないとその時初めて口に出したんだった。
…人を失う事の恐ろしさや、不安
それを無理やり受け入れようと心とは正反対の事を考えることも
それも支えてくれた人、お陰という言葉がつく人であれば尚更酷いのも
全部、痛いぐらいに分かってしまって
「…全員、結局は俺の前からいなくなる」
別れを告げた本当の理由を聞いても やっぱり憎めやしなかった。
彼が私を手放しきれなかったのは
「……それが怖くて手放したのに
Aが居ないと無理だった」
私がひとりの世界で彼を拒みきれなかったのと同じで
寂しさや孤独を1度感じてしまうと、結局幸せだった元へと無理やり舞い戻るような人間になるから。
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「……おばあちゃん、Aが帰った後にいつも言ってたんだよ」
『……?』
「……娘とそっくりで、どうしても思い出してしまう って。」
『………そうだったんだ。』
___”すごく、私の娘に似ているのよ。”
脳内で再生される、あの時のおばあちゃんの声はウォヌの声と重なって聞こえる
あの愛おしいものを見るかのような
どこか辛くて悲しそうな目
…おばあちゃんは、ウォヌのお母さんと私を重ねてたから 可愛がっていたんだろうか。
「…違うよ」
『、え?』
「……おばあちゃん、 本当にAの事大好きだったから」
他になんの意味も無く、ね。
何も言っていないのに、私の顔を見てそう言ったウォヌ。
その手でゆっくりとお墓にかけられていく水が、まるで生きているようで
『……ウォヌ。』
「…ただ、……自分の子供がどんなのであれそれぐらい愛おしい
そう考えれば、俺だって母さん達に愛されてたんじゃないかって」
そう呟いた彼の横顔は、寂しそうなのにどこか前向きだった
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月紗?(プロフ) - fuyu0526さん、ありがとうございます😿 すごく嬉しいです😢💞次の作品まで……😭🤦♀️もうフルスピードで修正終わらせます。 主様もどうかお身体にはお気を付けてください。そして……お鼻交換してください… (2023年4月15日 11時) (レス) id: d53eba97f9 (このIDを非表示/違反報告)
月紗?(プロフ) - ここここさん、ありがとうございます😭そんな有難いお言葉を聞けるような作品を作れる人間に、少しでもなれた事が本当に嬉しいです。😿これからも温かく見守って下さる皆様の為に頑張ります💪ご拝読して下さりありがとうございました。 (2023年4月15日 11時) (レス) @page46 id: d53eba97f9 (このIDを非表示/違反報告)
ここここ(プロフ) - 完結おめでとうございます! いつも楽しみに読ませていただきました ここまで夢中になったお話は初めてで、何回も読み直してしまいました笑 主様の言葉選びや物語の進め方がすごく好きです! これからも応援させていただきます! 素敵なお話をありがとうございました (2023年4月14日 23時) (レス) @page46 id: 4b95013bd6 (このIDを非表示/違反報告)
fuyu0526(プロフ) - いつも更新楽しみにしていました。完結,おめでとうございます。次の作品も必ず読ませていただきます‼︎これからもお身体に気をつけてお過ごしください。P.S.私は花粉症ではありません。 (2023年4月14日 23時) (レス) @page46 id: 841865627b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月紗? | 作成日時:2023年1月14日 14時