失う彼は別れを知らない ［WN］

▽ ページ23

「今年の梅雨は長いんだってよ」


『……そっか〜。 なんか気分も上がらないね』


「いつもの事じゃん。失恋さん」




『…相変わらず私をからかうのが好きですね。』



講義終わり、久しぶりに2人でご飯を食べに行くことになって


いつも通り降ってる雨にジフンと2人で傘を差して、ぼーっと歩く。




「間違っては無いだろ？」


『……そうだけどさ。』





未だに抱える暗い気持ちと一緒に打たれる雨は、やけに心の腐敗を加速させてくる。


だけど、梅雨が大嫌いだなんて思ったのは人生で初めてで


去年もその前の梅雨の時期も、どうやって過ごしてたんだろうって今になって考える


雨の日でも一緒にいれば大丈夫だなんて、馬鹿なこと思ってたからかな




『てか、聞いてなかったけどジフンは彼女居ないの？』


「もし俺に居たとして今聞くならだいぶ手遅れだと思うんだけど」


『……たしかに』


…そう言われてから気づいた。


「居ないよ。居たらこんなとこでほっつき歩いてない」

『ですよねー。はは。』

「……ちょっとは興味持てよ」


……これでも、だいぶ興味は持ってるつもりだよ


だって、言われた通りもしジフンに今彼女がいるなら


私はこれ以上大罪を犯すことになるからね



『例の白ご飯おかわりし放題の焼肉屋さんは？』

「まだもうちょっと先………てか、行くのパスタ屋さんじゃなかったっけ」

『口ではパスタ屋って言ってたけどジフン、目がずっとその向かい側の焼肉屋だったよ』



さっきどこに行くか決める時、パスタがいいって言った私に合わせてくれたジフンだったけど

マップを見ていた目がずっと、違う方を見ていた事を知っていた。

ジフンが白ご飯大好きなのも、パスタより焼肉が好きなのも承知済みの上。





「……いいのか？お前、服白だろ」

『…パスタも十分飛び散ると思わない？それに
ジフンの服も真っ白ですよ。』



そう伝えるとははっと高い声で笑って、”そうだった” なんて言うジフン。


「2人で白い服汚すか」

『なんで2人で汚すの決定なのさ』

そんな事言いながら笑いあってると、目の前の横断歩道の真ん中で1人

車椅子に乗ったおばあさんが、もうすぐ赤になる信号を渡れていないままでいるのを見つけた。



『ねえジフナ、あそこ』

そう言って2人で駆けてから、ジフンがゆっくり声をかけておばあさんの車椅子を押していく。

私はその横で、おばあさんの荷物を持って。

その一瞬だけでも自分の肩を濡らしながら、レインコートを既に着ているおばあさんの方へと傘を傾けるジフン。

その光景には、どこか見覚えがあった。

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