初夏が似合わない君の季節月［WN］2

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『…なんか人増えてきたね、』

「うん、もうすぐで花火の時間なんじゃない」

『え、もうそんな時間だっけ。』

気付けば色んな人とぶつかりそうになるくらいに人が増えていて。

少しだけうっ、と思いつつ頑張って呑まれないようにそんなことを言いながら進んでいると

人の並がどんどん寄っていく気がして、もみくちゃになりそうだった。


『……久々かも、こんな人混み突っ込んだの』

「俺も」

2人して苦笑いで、どうにかなるかな なんて言っていると



『…え、』


突然、右の手のひらを優しく誰かに包まれた


……誰だ？まさか小さい子がはぐれて…だなんて思いながらそっちの方を見ると



「危ないから早く抜けよう」


腕から伝って顔を見れば それはウォヌ君の手で

『…ちょ、早』


それに驚いてる暇もなく、ウォヌ君は少しだけその手に力を入れて前へとずんずん進んで行った。

少しだけ小走りになってしまうほど 人混みの中をかき分けて行く後ろ姿

私達の左や右にいる沢山の人なんか、ピントが合わなくなって


ただ揺れる髪の毛が スローモーションに見えた。


温かいウォヌ君の手のひら

そこから、その温度以上の熱い何かが広がっていく気がして

夏の熱気と一緒に飛んでいって欲しいだなんて、思った



夜空に蛍だけが浮かび上がるように その背中しか見えなくて

優しく握られているはずなのにもう一生離れないんじゃないかってぐらい 溶けだしそうなくらい
私の体温だけがどんどん上がっていく




…ウォヌ君は


誰かとはぐれないようにする為には


それがもし仮にただの同級生だったとしても


近くも遠くもない、女友達だったとしても



こうやって軽く手を取って引っ張るのかな




誰に対しても考えて見た事のないそんな事が 頭の中に浮び上がる



どこまでも素っ気なく見えて 底なしに優しい人だから


そんなこと当たり前かもしれないのに どこか考える度ぎゅっと胸が締め付けられる気がした




揺れる視界に いつの間にか通り抜けた人混み

さっきまで早かったウォヌくんの足取りも だんだんゆっくりになっていった



『……ありがとう』

「…ううん」



振り向いたと同時に離れた手と手

その瞬間に 夏のはずなのに手に触れた風が冷たく感じた


不意に名残惜しくてそのままにしてしまった手を仕舞って、ぎゅっと握る



「さっき教えてもらった場所って、どのあたりだっけ」


『……確かね、』


それにどこかまた ぎこちない空気が流れた気がして

未だに胸が割れてしまいそうなぐらいドキドキしているのに 気付かないふりをした。

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