White sugar Black coffee 【2】

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きっと私が帰った後もしばらくカフェにいたんだろう。


あのまま意地でも店長の帰りを見届けるために一緒に出ていれば、店長は風邪をひかなかったのだろうか。


雨の日に雨宿りしに来るお客さんが多いけれど


そんなお客さんが来るまで 1人で居たりしたんだろうか


店長自身が自分を労らないだなんて、本末転倒なのに。



……なんて、ぼんやり考えているうちに出来上がった卵雑炊。

食器棚にあった可愛らしい形の器にお玉でついで、レンゲをさしてお盆にのせる。

だいぶ煮え立ってしまった気もするけれど、頑張って冷ましてもらおう。


片手にお盆を持ちながら、そーっと寝室のドアを開ける。


ベッドの方に目をやると、さっきまで出ていた手も布団のなかに引っ込めて 首だけを出して目を瞑っている店長が居た。


それに少しだけ安心しながらも忍足で入って、音を立てずにドアを閉める。


少しだけかさが減っているスポーツドリンクをよけて、お盆をテーブルに置いて。

膝をついて顔を覗けば、微かに荒い寝息が聞こえてきた。

目を閉じているとより一層目立つ長いまつ毛と、こんな時でも可愛らしい口角。

それに数秒思わず見とれてしまって、そんなことしてる場合じゃないとすぐ自分を現実に引き戻した。

……熱を出して苦しそうに寝ている人の顔をまじまじ見て、なんてことを考えているんだ私は。

そう思ってもなんだか あまり眠れていない彼を起こすのも逆に悪いんじゃないかなんて考えて。

雑炊を少しさますついでにと、あと数分だけ静かに見守ることにした。



ふと落ち着いて辺りを見回すと、部屋がよく整頓されていてホコリひとつ無いことに気が付いた。

よく良く考えればさっき使わせてもらったキッチンもカフェとほとんど変わらなかったし

本棚の上にある木で出来た小さな人形の置物なんかにも店長らしさを感じる。


…清潔感の塊のようなこの綺麗な部屋に、誘われた人は何人いるんだろうか。

こんなに綺麗な部屋にはきっと、綺麗な人が座ったりしたんだろうな。


それが羨ましかったり、羨ましくなかったり。



『……？』


部屋の角なんかをボーッと見つめてそんなことを思っていると、何かが私の腕に触れた気がした。


「んー、…出来たら起こすって言ってたじゃ〜ん…」

『……あ、すみません…』

私の方に手を伸ばして、少しだけ目を開けてこっちを見ている店長。

それにどこかさっきの考えを見透かされそうで、慌てて”体起こせますか”なんて誤魔化した。


……今は店長の回復が1番なんだから。しっかりしないと。。

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