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××20×× ページ21

小さく零した藤堂さんはそれでも強く言い放つ。
高城さんの才能に嫉妬していたこと。
自分が諦めた夢に手が届くかもしれない恐怖。

「高城さんにだけは絶対に負けたくなかった。だから薫ちゃんを不正に協力させました」

全て自分の指示だと言う藤堂さんは確かに薫を大切に思っていた。

「違うよ、あなたは1番大切なことを言っていない!ホントは「いいえ!」」

「私はただ勝つためにやった。それだけです!」

「先生、」

小さく震えていた薫が1度私の手をぎゅっと握りゆっくりと離した。

「もういいんじゃないですか?」

足を踏み出した薫を皆が見つめる。

「先生の娘さんは、小さい時に病気が見つかって何度も手術と入院を繰り返していて、今も病院に。」

だから藤堂さんは負けられなかった。
勝ち続けて娘さんの治療費を手にするために。

守りたかった。助けたかった。

その想いが藤堂さんを不正へと導いた。

「最後に1つ、僕からのお願いです!」

車へと戻ろうとする藤堂さんの背中に天草さんが声をかける。
「あなたの大切なこと娘さんのために僕が少し、お手伝いをすることを許して貰えませんか」

藤堂さんは泣きながらよろしくお願いしますと頭を下げ、車に乗り込んだ。

「金田さん、あなたも話を聞かせてもらえる?」

「はい。」

「あの、金田は、」

「こちらで一旦保護するわ。」

連れていかれる薫を見て不安そうな顔をした夕也は竜崎さんの言葉に強ばらせていた表情を和らげた。

「A、ありがとう」

真っ赤な目で真っ直ぐお礼を言う薫。
私はただ首を横に振ることしか出来なかった。

「A、藤堂さんが不正してたの知ってたのか?」

『いや、非常階段に来た時高城さんの声がしてそこで、あ、』

そこまで話して私は聞こえた内容を伝えていなかったことを思い出した。

「なんで言わないんだよ」

ちょっと怒った顔をした夕也にこめかみをぐりぐりされる。

『いた!いたい!ごめんごめん!聞こえただけで意味は分からなかったし伝えても邪魔になると思ったからー、』

止まらない夕也の手を掴む。

「言ってみなきゃわかんないだろ」

『うー、ごめんなさい、』

悪いことをしてないのに謝るのは癪だが夕也の言うことも一理あるので素直に謝罪する。

「ったく。俺達も帰ろう」

『うん』

さっきまでちょっと怒ってたとは思えない大きくて優しい夕也の手が私の頭にぽんと乗っかり、全ては終わった。

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ひな(プロフ) - いつもお話更新ありがとうございます❤️‍🔥四鬼くんと夢主ちゃんはたから見たらカップルでしかないのに付き合ってないのがうずうずするので早く付き合って〜の気持ちです😍最終的には2人は付き合って欲しいなって思ってます! (9月27日 7時) (レス) @page13 id: be4e73e30e (このIDを非表示/違反報告)
KN - 続きが楽しみです。このまま四鬼くんとのいい感じの距離感が良いです。今の距離感が最高です。 (9月23日 11時) (レス) id: 2942423203 (このIDを非表示/違反報告)
Sa-ya(プロフ) - いつも楽しく拝読しています!ぜひ四鬼くんと主ちゃんをくっつけてイチャイチャさせてほしいです!これからも楽しみにしています! (9月18日 14時) (レス) @page5 id: 5b9ae89ac1 (このIDを非表示/違反報告)
肩幅(プロフ) - お話楽しく読まさせてもらってます!私愛され系が好きなので、ぜひ四鬼くんに守ってもらいたいです!!まっすーも大好きなので天草さんもいっぱい見れると嬉しいです!!無理のない程度でぜひお願いいたします!! (9月18日 0時) (レス) @page5 id: 5614181636 (このIDを非表示/違反報告)
KN - おもしろくて最高です (9月16日 8時) (レス) @page5 id: 2942423203 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たられば | 作成日時:2023年9月15日 22時

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