caramel 2 (ページ15)

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昔の話01 ページ15

2018年夏

この日、メットライフドームでおよそ3万4千人の人が熱狂したKaMiFes2018が行われた。
それは、女優神崎Aの20歳の誕生日を記念した盛大なお祭り。

女優だけでなく、様々な分野において第1線で活躍する彼女のこのイベントはファンだけでなく、多くの人が注目し、満員御礼で幕を閉じた。

これは、そのすぐ後の話。

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先程とは打って変わって、誰もいない客席を1人で眺める。
まだ熱気は冷めず、余韻が残る。

｢Aさん、お疲れ様でした！｣

声を掛けてくれたのは、準備段階から一緒に試行錯誤してきたスタッフの1人。

『こちらこそ、本当にありがとうございました』

衣装や、セット、歌う曲の順番や照明まで我儘をたくさん聞いてもらって、全てに応えてくれたスタッフの人たちには感謝しかなかった。

｢いえいえ、1人でここまで背負って、本当に素敵なステージでした。もう、裏で見てて泣いちゃいましたよ！｣

たしかに、彼女の目元は赤かった。

『そう言ってくれると嬉しいです』

にこりと笑えば、彼女も応えるように笑ってくれた。

｢あ、じゃあみなさんに一言良いですか？｣

『はい！』

マイクを受け取り、改めて今日のために尽力してくれたスタッフの一人一人と向き合う。

『えっと、今日は本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。
たくさんの我儘を聞いて下さり、本当に感謝しかありません。
準備段階から今日まで、誰一人として欠けることなく、ここまでこれたこと、本当に嬉しく思います。
20歳という節目に、ここに立てて本当に幸せ者です。
皆さんの支えがなかったら、絶対に見れない景色でした。
またいつか、どこかでもう一度このKaMiFesをやることがあれば、絶対にこのメンバーでやりたいです！
本当に、本当に、ありがとうございました！！！』

深く頭を下げる。
その瞬間、今日までの日々が蘇る。

今日来てくれた人達は皆、笑っていた。
けど、このイベントが決まったばかりの頃は批判もあった。

女優のくせに。大したことないのに。演技だけしてればいい。最近しゃしゃってる。

心にもない言葉で何度も傷ついた。
苦しくて、辞めたくて、どうしようもなくて。

それでも、頑張れと言ってくれる人がいた。
支えてくれる人がいた。

顔を上げたAの目から大粒の涙が零れる。
それは、止まることなく何個も。