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「あー…」
俺が聞くと、紫耀は意味をなさない音を発して、それきり何かを続ける気配がない。
普段は、俺が来たら飛びついてくるんちゃうかっていう勢いで出迎えてくれるのに、今日はそれがなかったから。
…別に寂しかったとかじゃないけど。
「ちょっと気になっただけやから別にええで？」
思いのほか、気難しい顔をしている紫耀が心配になって声をかける。本当は俺に言ってほしいけど、話したくないなら無理に聞くわけにもいかない。
「…廉ってさ」
名前を呼ばれて、俺には言えへんのかな、と半ばいじけて紫耀の肩口に押し付けていた頭をあげる。
「弟のこと、覚えてる？」
「おとうと、？」
突然の話題にオウム返しをすることしか出来ない。
弟…。
俺にも一応弟はおる。今、どこにおるんかも何してんのかもわからんけど。
「えらい急やな？」
「…ちょっと気になっただけだよ？」
まぁ、正直にいえば弟のことはずっと心配していた。
俺があの村を出たことで、次の標的が弟に移る可能性だって大いにあったから。あの時は、辛くて辛くて仕方なくて他のことまで考えられなかったけど、江戸に来て少したった頃それに気づいて、だいぶ自己嫌悪に陥った。
……元気にしとんやろか。
「弟くんに会いたいと思う？」
紫耀の問いかけに少し考えてから頷く。
もしひと目でも会えるなら、一方的にでも、成長した弟をみたい気持ちはある。
でも、
「でも、今の俺は見られたない…」
正直にそう言うと、紫耀は俺の顔を覗き込んでなんで？と問う。
「…こんなとこで働いとんおかしいもん」
別に今の自分が嫌いなわけじゃない。むしろあの頃よりよっぽど好きである。
ここで働く自分を否定する訳でもない。でもやっぱり一般的に見て、そもそも遊郭で働いているというのもあまり良いイメージではないのに、その上男だなんて。恥さらしにも程があると思う。
すると、紫耀は優しい顔をして俺の頭を撫でた。
「…でも廉がここで働いてなかったら、俺ら出会えなかったよ？」
瞬間、目が合って引き寄せられるように唇が重なった。
紫耀にうなじを引き寄せられて、俺も貪欲に紫耀を求める。
そのまま押し倒されて、鎖骨の辺りに紫耀の顔が埋められるともう何も考えられなくなる。
突然始まりを告げた甘い夜に、弟のことは頭から消えていた。
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名無し(プロフ) - 音奈 きらりさん» コメントありがとうございます。幸せな2人もちゃんと書いていきますね！笑 (2020年6月17日 20時) (
レス) id: 552652e013 (このIDを非表示/違反報告)
音奈 きらり(プロフ) - 楽しく読ませて頂きました。幸せに暮らす2人も見たいです〜♪ (2020年6月17日 17時) (レス) id: ba403501a5 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - いむさん» 看板息子、いいですね！笑 しょうれんはきっと幸せに暮らしてます笑 続編もぜひお楽しみください (2020年6月17日 17時) (レス) id: 552652e013 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - なーさん» 読んでくださってありがとうございます！番外編のアイデア思い浮かびすぎてやばいです笑 番外編に関しては、皆さんからお話のリクエスト等も、もしあったら書こうかなと思ってるので、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです (2020年6月17日 17時) (レス) id: 552652e013 (このIDを非表示/違反報告)
いむ - しょうれん最高でした！二人がどんなふうに暮らしてるのかな〜、など、沢山妄想しています。笑笑 続編も楽しみです！きっと廉くんなら看板息子…？になりますよね！ (2020年6月17日 11時) (レス) id: 220416b2f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名無し | 作成日時：2020年5月3日 19時
