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『…ども』
たった一言だけ、交わした＿交わしたも何も俺は何も喋ってないが＿俺の初めての客。
これから、色んな親父に色目を使っていかなくてはならないのか…。
しかし、自分にはそれを拒否する権利がない。
こんなことをしていかないと、結局は生きていけないのだ。
ここへ遊びに来る気色の悪い親父の方が、よっぽどいい生活をしているし、自分は金と引換に遊ばれている立場である。
1人にはだだっ広く感じるへやの隅で物思いにふけっていた。
「…廉」
その時、襖が開いて俺を呼ぶ声がした。
「優太、どうしたん？」
いずれはここの楼主になるであろう、岸優太とは年齢もさほど遠くなく、幼い頃から女ばかりのこの地で唯一兄弟みたいに仲が良かった。
「いや、今日どうだったかな…って」
「いや、別にどうもないで？心配いらんって。俺が今までどんだけ修行してきたと思ってんねん」
おどけたように返す。
実際、俺はなんにもしてないし今日に関しては本当になんの心配も要らない。
それよりも。
「あのお客さんって有名人なん？」
俺が部屋へ戻る途中、色んな女から"あの平野屋の相手してきたの？""どんな人だった？"と質問攻めにされた。
確かに見目は良かったが、俺は見たことがない。
「ああ、平野屋って知らない？今廉が着てる着物もそこで仕立ててもらってんだけど。あの人、全然女遊びしないし、そういう噂がないんだよ。だから、珍しくて」
「そうなん」
女遊びせんのや、あんな顔で。
「…なんか気に入らない人だった？」
優太がまた心配そうに眉を下げて聞いてくるから、慌てて否定する。
「いやいや！そんなんじゃないって！ちょっと意外やっただけや」
「なら良かったわ」
「ん。なんか今日は疲れたからもう寝るわ。ありがとな」
優太と別れて、寝る準備をする。
普通、一人部屋が与えられるのは階級が上の遊女だけだ。
まだまだ下っ端の俺が一人部屋なのは、男だから。さすがに他の遊女と雑魚寝するわけにはいかない。
それをよく思わない奴だって山ほどいるし、そもそもなんで男が遊郭にいるんだって話だ。
まぁ、その話は考えたくない過去である。
俺はとにかく早く自立したい。ここにこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
…平野屋の紫耀とかいったか。
自分でいうのもなんだが、俺だって見目は悪くないし女装だって完璧だ。
奴は俺に惚れたと思う。
「ま、頑張りますか」
そのまま眠りについた。
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名無し(プロフ) - 音奈 きらりさん» コメントありがとうございます。幸せな2人もちゃんと書いていきますね！笑 (2020年6月17日 20時) (
レス) id: 552652e013 (このIDを非表示/違反報告)
音奈 きらり(プロフ) - 楽しく読ませて頂きました。幸せに暮らす2人も見たいです〜♪ (2020年6月17日 17時) (レス) id: ba403501a5 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - いむさん» 看板息子、いいですね！笑 しょうれんはきっと幸せに暮らしてます笑 続編もぜひお楽しみください (2020年6月17日 17時) (レス) id: 552652e013 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - なーさん» 読んでくださってありがとうございます！番外編のアイデア思い浮かびすぎてやばいです笑 番外編に関しては、皆さんからお話のリクエスト等も、もしあったら書こうかなと思ってるので、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです (2020年6月17日 17時) (レス) id: 552652e013 (このIDを非表示/違反報告)
いむ - しょうれん最高でした！二人がどんなふうに暮らしてるのかな〜、など、沢山妄想しています。笑笑 続編も楽しみです！きっと廉くんなら看板息子…？になりますよね！ (2020年6月17日 11時) (レス) id: 220416b2f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名無し | 作成日時：2020年5月3日 19時
