泣き虫を笑って ３

１２４：おあいこ ページ42

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「周りの人がAさんのこと怖い人だって言ってるの聞いて、どうせ裏では性格悪いんだと思ったら…誰もAさんの悪口言う人居なくて」



そりゃあ…悪口言われるようなことをしてきた覚えは無いけど……。



「だから余計ムカつくんです。私がミスした時もたいして怒らないし」

「…怒って欲しかった？」

「・・・」



私がそう言うと、黙り込む。


なんなのよ。何が言いたいの、この子。



「たしかに…島崎さんが私のこと嫌い…なのは感じてたよ、もちろん。だからって態度に出したりはしない。だって大人だから。ましてやここは会社だから」



なんて、カッコつけたけど……この前はポロッと本音が溢れたんだった。



「公私混同はダメだとか、そういう古臭い考えも嫌いなんですよ」


遠回しにオバサンって言われた？今……。



「私のことが嫌いとかそういうのはどうでもいいんだけど、仕事は仕事だからね。それはどこの会社でも同じだよ」

「・・・」



多分、こんな話をしたって聞く耳は持たない。


どうせ意味が無いのは分かってるけど、最後に先輩風をちょこっと吹かすくらいは…許してもらおう。




「島崎さんって、パソコン苦手でしょ？」

「・・・」

「だけど、人と話すのは得意だよね？」

「えっ……」



確かに、愛想は無い……私に対しては。

だけど人の懐に入るのが上手い。

私なんかよりもずっとずっと。



「島崎さんなら、もっと良いところを伸ばせる職場があると思う。学生時代接客のバイトとかしてたのかな？ここは事務職が多いし、つまらなかったでしょ」

「…なんですか、それ」

「出来た教育係じゃなくてごめん。もっと早く気付いてあげればよかったね」



これは、ちょっと嫌味。今までのお返し。







「あの、私…」



島崎さんが何か言いかけた時、向こうの方に人影が見えた。



「もう、社員じゃなくなったんだよね？」

「…え？」



なら、良いよね。



「公私混同はダメって言ったけど、もう社員じゃないならいっか」

「……何の話ですか？」

「私は、京本さんが好きだよ」




向こうに見える人影がどんどん近付いてくるから、聞こえてしまわないように小声で話す。




「カフェの前でバッタリ会った時あったでしょ？……私だって島崎さんにムカついてた。これでおあいこだね？」

「・・・」

「それじゃあ…」



そう言って、その場を離れようとすると


「あの！」


って呼び止められる。







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