泣き虫を笑って ３

１０４：どういうつもり？ ページ22

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「先輩だからって何でも言うこと聞くわけじゃ無いですよ、俺」



まただ……。


火花が散ってる。もう、バチバチに。




「いいから来いって」



そう言って私の手を取った京本さんの腕を、




「どういうつもりだよ」




今まで聞いたことの無いくらいの低い声でそう言った北斗が……思いっきり掴んだ。



え、タメ口……なんて心の中でツッコミを入れてる私は、意外と冷静なのかもしれない。




「あ？」



こっちもまた…普段から人一倍怖い声してるくせに、もっと怖い声で言う。




「ちょっと、やめて……」



まさか殴ったりしないよね？ってくらいの剣幕の2人に挟まれて、私はそれしか言えなかった。



「今更、Aに何言うつもりですか。あの時、事務所出ていってどこ行ってたんですか」

「だから、」

「この前だって…あんな態度取られたAの気持ち、分かんないんですか」




京本さんの言葉に被せるようにして北斗が言う。

こんなにも北斗が、誰かに対して引き下がらないところを初めて見た。




「なんでお前がそんなこと言うわけ」




京本さんも、北斗を睨み返す。




「そうやって中途半端なことしてんなよ」

「……何言ってんの、お前」




私の気持ちは京本さんには知られているかもな……なんて思っていたけど、そうじゃ無かったらしい。




「そうでしょ？A」

「えっ……」



2人の視線が私の方に向く。




「そっちこそ、早く帰ってあの子のこと慰めてあげたらどうですか？」

「は？」



挑発するみたいな言い方をする北斗に、京本さんはあからさまに苛立ちを見せる。



……そうだった。




そうだよね……あの時の京本さん、大事なもの守るため…みたいな顔してたもん。



ちょっと来いって、なんなの。


私に何の用があるって言うの？



優しくしたり、冷たくしたり、興味無いって顔したり、今一緒に居る北斗には邪魔って言ったり。



もう、本当に訳わかんないよ。



島崎さんも、京本さんも……2人して私のこと振り回さないでよ。




島崎さんのこと追いかけてどんな話したのか知らないけど、
まだ私のこと責めたりするつもり？




私のことなんてどうでもいいなら……最初から優しくなんてして欲しくなかった。









「私、帰ります……」







逃げるように事務所を飛び出した。








京本さんの手を振り払うのは、これで二度目だった。





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