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「なぁ、樹」
「ん？」
「Aさ、元気？」
「は？」
唐突な俺の質問に、樹は明らかに戸惑っていた。
「なにお前、親戚のオヤジかよ」
…親戚って。
兄よりも更に遠くなってんじゃん。
「いや、最近A見てないなって思ったからさ」
「そう？普通にバイト来てるけど？俺昨日も一緒だったし、明日もあいつ入ってるよ」
「……そっか」
ここ最近、A に全くと言っていいほど会わなくなった。
心当たりは……あるっちゃ、ある。
あの日。
本屋でたまたま会った後、俺ん家で一緒に飯食った時。
��まっちゃんさんって、好きな人とか居るんですか？��
そんなこと聞いてくるなんて珍しいなって思った。
だからーーー…
��好きな人は居るよ。彼女じゃないけど��
つい、そんな回りくどい言い方をしてしまった。
大体この付き合いの長さで今更そんなこと聞くってさ、本当に好きな奴に聞くか、反対に全く恋愛感情の無い相手に聞くかのどっちかじゃない？
その日は俺があげたピアスつけてたし…。
それつけてんの初めて見たとか特大ツンデレカマしちゃったけど、本当は何回も付けてるのを見たことがあった。
もしかしたら、って期待した。
Aのことが好きだって、そう言えば良いだけなのに。
Aが聞いてきたのと同じように、俺も聞き返すと
��居ますよ��
って、返ってきた。
だけど、その先を聞く勇気が無かったんだ。
もしこれで、京本のことが好きだとかAの口から言われたらもう俺立ち直れないなって。
期待したり、やっぱり…って大事なこと言えなかったり。
もう俺本当に面倒臭い男だなって自分でも引く。
俺だったらこんな奴と付き合いたくない。
結局、ふーんって聞き流して話を逸らした。
男気が無いにも程がある。
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作者名：chaka
| 作成日時：2022年6月18日 12時
