✧甘いはずなのに ページ38
✧
教会の掃除を終え夜、結局スマイルは戻ってこなかったためきりやんと2人で軽く掃除をした。
きんときも戻ってこなかったし…あれもサボりと捉えた方がいいのだろうか…?
自分の中にまだ異常がいるとわかっているのに、変わらず日常を送っている。
この先もそんな日々が続くのだろうかと、ぼんやりと考えながら家の扉を閉める。
ベランダへの扉は開いておらず、今日は2人とも来ていないんだなと思い
モヤモヤしながら荷物をソファに放り投げる。
突然、ぐらっと歪む視界に耐えきれずリビングの床にへたり込む。
恐れていた吸血に魔力を使いすぎた反動だろう。
ここ数日間魔力の残量が安定していなかったし、
いつか来ると思っていたが、周りに誰もいない今は耐えるしかないだろう。
呼吸が乱れ、リビングの真ん中で横になり体を丸める。
黒く靄がかかったような視界に見慣れた家の風景。
過去感じたことのないほどの腹痛と、うまく息が吸えない恐怖。
__誰かの声がする。
?「…A…!大丈夫!?」
聞き覚えのありすぎる声、だけど声の主がここにいる事を脳が否定している。
na「と、とりあえずベット行こっか」
「…せんせ…?」
na「なに?どこか痛い?」
「なんでいるの…?」
出張って言ってたはず、数日間会えないんじゃ?
ドア閉めてなかった、今日は開けっぱなしでよかった
お姫様抱っこされて寝室まで運ばれる。
先ほどよりもはっきりとした視界に焦った顔の先生が映る。
「出張って、いってたじゃん」
na「…あー…あれ、嘘なんだよね、数日休む口実」
「なんで…?なにしてたの……?」
na「………A、魔導書ってどこにある?」
露骨にずらされた論点に言葉が詰まる。
イザベラを復活させたいから、私に読ませようとしてる?
「やだ、言わない」
na「…聞いたんだ」
少し驚いたような顔をした後、すぐにいつも通りの優しい笑顔になる。
どうして私のなかにイザベラがいることを知っているのか
魔導書の最初、日記の部分に書いてあった文章を思い出す。
“もしこの実験のことが世に出てしまったら、きっと私は追放されて消えてしまうだろう。
皆に知られ死んでしまうくらいなら、自ら堕ち魔力を持ったあの██に入り込みたい
そしてその新たなる主が、愚かで、そして好奇に満ちた心でこの魔導書を読み、再び____”
今思えば、あれは私のことだ。
✧
150人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白月 | 作成日時:2024年1月5日 13時