⋆ ページ4
✧
曖昧な返事で濁らせば、なかむ先生の手が離される。
その流れで頭を撫でられるが、もはや恒例行事だ。
魔力より食費の方が私にとっては大事なんだけどなぁ……
sha「……せんせー、Aサンが納得してない顔してまーす」
「ぇあっそんなことないっすよ」
na「別に良いよ、今日晩御飯作りに行くから」
「ねーえ今月の家庭訪問3回目だよ?」
na「もっと来て欲しいって事かな?」
「違うけどー」
休憩モードに入ったのか先生は机に体重をかけて今にも眠りそうだ。
生徒の前とは思えないような態度だが良いのだろうか。
休み時間だし他の生徒も来るだろうに。
na「……え、ほんとに今日家行っていい?」
「んー今日は家帰るのいつも以上に遅いから無理」
na「絶対今考えたじゃんその理由」
「いやでもこの理由現実になるから大丈夫」
na「俺が大丈夫じゃないんだよなそれ」
目の前の席のシャークんが問題に飽きたのかペンを乱雑に机に置いて話す。
sha「生徒の家にそんな頻繁に行くもんじゃないだろ」
na「俺はAの事生徒じゃ無くて友達だと思ってるよ」
「私は思ってない」
sha「Aもなかむだからって簡単に家にあげるなよ」
「だってご飯美味しいから…」
sha「おい」
na「聞いたかしゃけ、win-winだ。」
sha「俺は認めないから」
ゆるゆると続く会話が途切れ、行を追う目線が動き出す。
しかし読もうと思っても何故か集中出来ない。
…栄養不足だろう。魔力で補おうと力を込めても出来ないと言うことは魔力も不足していると思われる。
仕方なく本を閉じ、机に体重をかける。
カバンの中からタオルを取り出し、心許ないが簡素な枕にしてその上に頭を乗せる。
na「…A?」
「栄養」
na「だから言ったじゃん」
先生は席を立ち教卓へ向かう。
視界には入らないが引き出しの音が聞こえる。
位置が低くなった頭がシャークんに撫でられる。
腹痛と朦朧とし始めた意識で、されるがままにされていた。
頭を撫でられる感覚が妙に脳内に響く。
外界の音が知らず知らずのうちに鳴っていた耳鳴りに掻き消されている。
そんな中、肩を叩かれ後ろを見るとゼリー状の栄養補助食品を持った先生が居た。
マスクを下げてからありがたく受け取り、蓋を開けて食べ始める。
鮮明になっていく景色を取り戻して近くのゴミ箱にゼリーのゴミを投げ入れる。
✧
150人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白月 | 作成日時:2024年1月5日 13時