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「…今回は痛くしないでね？」
kn「感情に任せて吸うと痛くなるんだよね、前回みたいに。
…まぁAが俺にイタズラしたせいなんだけどね？」
「ごめんて」
恥ずかしい思いも多少はあるが、今は何より恐怖が強い。
kn「力抜いて、緊張してるでしょ」
「…怖くて」
kn「痛くしないから、大丈夫」
背中を摩られる。
気がつけば、右手を押さえる力が緩くなっている。
いつでも抜け出せるようになったのに、私はまだこの体温に縋っていたいと思っている。
1秒1秒が長く、そして重い。
小さく深呼吸をして自分を落ち着かせる。
真っ白になった頭の中が、自分の心拍が早くなっている事を明らかにする。
きんときが跡に合わせるように牙を当てる。
怖さか痛さか涙ぐんだ目をギュッと閉じるが、そのせいで意識が全て首にいく。
＿食い込む牙で、血を出しながら声が漏れる。
「はｯ、ぁ…やっ…」
傷口付近に流れる血液が、どくどくと音が鳴るほどうるさい。
緩く、長く、多く。
「…ｯん、あぁっ…」
痛いはずだった。
自分がおかしくなってしまったのか、今は快楽へと変わっている。
目を開けているのか判別がつかないほど暗い。
自分の声すら聞こえないほどの耳鳴り。
抱きしめられている体温だけ感じる痺れ切った体。
永遠とも感じる時間。
パッと離れていく唇の感触が妙に頭に響いた。
それを皮切りに足が自身の体重を支えきれなくなり、
凭れていただけだったきんときへ押し倒すように体重を預ける。
kn「えっ…A？」
なんとか魔力を血液に変え、体が安定し始める。
突然体重をかけられたきんときは、後ろに押されて柵に凭れている。
きんときにバングルを当てないように、反射的に柵へ両手をつき耐えた私。
なんとか、体重をかけずに安定した姿勢をとれた。
…壁ドン的な状況だ。
「ごめん、今…まだ…」
背中を摩られながら呼吸を整えていく。
いつまでもこうしてられない。
やっと呼吸が整ってきて、きんときを見上げる。
「…ごめん、もう…もう大丈夫」
kn「いやこっちこそごめん、その…吸いすぎた…」
「え、いや、うん…久しぶりの血で手加減出来てないよね？」
kn「あー…まぁそれもあると思うんだけどさ」
軽く睨んでも全く怯まないきんときが照れたように目を逸らし、
それを隠すように私の耳元で囁く。
kn「Aの血が美味しくて…」
「嬉しくない」
kn「んー吸血鬼にとって最大の褒め言葉だけどな」
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作者名：白月 | 作成日時：2024年1月5日 13時
