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「でもなんでそんな情報きりやんが知ってるの?
スマイルは人間界に来たとき記憶喪失だった、今も記憶は戻っていない
…きりやんもイザベラと顔見知りみたいだし…」
kr「うん、そう…………実は…ぁ、」
洗いざらい全て話そうと決意したように見えた瞳が逸らされる。
そのまま「ごめん」と微かに聞き取れる声量で呟くきりやんは、
スマイルの“嫌いな人との嫌な約束”とは違い、
“大切な人との大切な約束”を破る事を嫌がっているように見えた。
ここまで抵抗しているのを見ると、イザベラは口約束ではなく
絶対に言ってはいけないという魔法をかけていると考えるのが妥当だろう。
記憶に関する魔法…おそらくだが考え方を変えることも出来るだろう。
…私の魔法で打ち消せるだろうか。
教会の壁にもたれてきりやんは、その場にしゃがみ込んでしまっていた。
そんな彼の目の前に膝をついてしゃがみ、目線を合わせる。
「…きりやん、こっち見て」
kr「…ん?」
膝にうずめていた顔を上げ、その両頬を私の両手で包み込み、目を逸らせないようにする。
『怖くないよ、全部話して?』
kr「ちょっ、おまッ…」
言葉に、魔力を乗せる。
私の固有魔法、“言霊”。
肯定も否定も、私の言葉が、本能を柔らかく包む魔法。
…ただ魔力の消費が激しい。
そのデメリットを知っているきりやんは、私を止めるように両頬に添えてある腕を掴む。
もう遅いよ。
強張っていた表情が、眼鏡越しの瞳が、安心したような色になる。
クラっとする、足に力が入らない、バランスが保てない。
kr「うぉっ、A!」
耳鳴りがする中ではっきり聞こえたのは、きっと耳元で叫ばれているからだろう。
返事をしなきゃ、無事だよって言わなきゃ、きりやんを安心させなきゃ。
「き、りや…だいじょぶ…大丈夫だから…」
kr「いやどこがだよ…!…ちょ、ちょっと待ってろ」
苦しい。
怖い。
痛い。
……
…
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作者名:白月 | 作成日時:2024年1月5日 13時