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残業が続いて5日目。華の金曜日と浮かれる世間とは対照的にズーンと沈む気持ちを押し殺して出社する。
日課となっていた長野さんへの告白もこの一週間ですっかりなくなってしまったし、そのおかげで長野さんと話す機会が余計になくなって気持ちが下がったままなのだ。
「ちょっとA〜?大丈夫?これあげるから元気だして!」
そう言って市販のチョコレートを渡してくれる。
「疲れた時には糖分補給だぞ〜」
カナコにお礼を言ってそんなに疲れた顔してるかな、とスマホを鏡がわりにして自分の顔を見てみると覇気のない自分の顔が写り、悲しくなる。
と顔なんかどうでもいいんだ、仕事!と自分に喝を入れて手を動かし始めた。
お昼はこれ一本で乗り切れる!と謳うスティックタイプの栄養食を片手に仕事を続ける。
午後からも一心不乱に仕事を進め、退勤時間になりだんだんと周りのデスクが空になっていく。
カナコも「今日は彼氏と会うんだ!」と嬉しそうに帰っていった。
すっかり日が落ちてきた頃パッと顔を上げると1人だけ残っていた長野さんと目が合う。
『長野さんも残業ですか?』
「うん、あとちょっとだからさ」
『そうなんですね』
静かな社内に私の資料を捲る音とキーボードを叩く音だけが響く。
長野さんもあと少しで終わるなら、また今日もラスト1人残るのは私だろう。
だったら誰に迷惑をかけるでもないし、少しだけ休憩しよう。
『あの、長野さん、私今から少し休憩するのでお先に帰っててください。お疲れ様でした』
顔を上げた長野さんは
「あぁ、うん、お疲れ様」
と言って優しく微笑んだ。
オフィスの端っこにある応接用ソファーで一瞬だけ寝ようかな。そう決めるとスマホのアラームを15分後にセットして、ソファーに横になる。
疲れていた体は横になった途端に休息モードに入り、すぐに意識を手放した。
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作者名:それ | 作成日時:2020年12月19日 16時