第十七幕 斜月 ページ19
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「池田屋には誰が襲撃します？」
「沖田と齋藤だろ。白霧は後方に回せ」
沖田と美雨が祇園祭の観光に出かけた後、
局長近藤と副長土方は秘密裏に会合をしていた。
今朝、隊員が敵一派の古高俊太郎を拘束して
きたので、情報を吐くまで拷問にかけていたのだ。
かなり手間取られたが、先ほど古高が
ようやく同志の集会場所を白状した。
「白霧に拷問の悲鳴は聞かせない方が良い、
沖田くんに連れ出させよう」
と言う齋藤の気遣いで、二人は非番となった。
君も素直じゃないなと、近藤が揶揄うと、
齋藤はいつものように無言で微笑むのだった。
「白霧には、池田屋周辺の残党を任せよう」
「大丈夫でしょうか？」
「心配無いさ。戦場での白胡蝶の強さなら、
隣に居る沖田なら誰よりも知っている」
沖田と美雨を別働隊にするという近藤に、
一抹の不安を抱えた土方が尋ねるが、
あっという間に言いくるめられてしまった。
土方は、近藤さんの言うことならと直ぐに
引き下がると、刀を片手に立ち上がる。
戦いの火蓋が切られるまで、あと僅か＿
✿.*･
太陽はいつの間にか沈み、往来は月明かりと
提灯で華やかに照らされていた。
神輿や出店が立ち並び、人々の騒がしくも
幸せそうな笑い声が木霊している。
昼の内に祇園祭を堪能した沖田と美羽が
旅館に戻ると、土方に慌しく呼び出されたので、
新撰組の証である空色の羽織に袖を通した。
長い黒髪をひとつに結い上げる幼馴染に、
沖田は後ろから抱擁すると、小声で囁いた。
「美羽、消して死ぬな」
耳元で聞こえるまだ声変わりしていない高い声。
美羽は少し擽ったそうに片目を伏せると、
ただ何も言わずに唇を静かに震わせた。
まだ幼い自分に何も打ち明けてくれない、
愚かで愛おしい男を憐れむように、慈しむように。
首に回された冷えた手に、己の手を重ねる。
それは私の言葉なのに、馬鹿な人＿
「美羽は決して死にません。貴方を置いて
死ねる訳がありません。どうか、お祈りを」
自分自身に言い聞かせているような、
不安でぐらつく心をなんとか留めようと
必死に紡いだ泡沫の言の葉だった。
けれど、男は鈍感な振りをして、ただ静かに
有難う＿。と感謝を述べるのだ。
ああ、なんて愚かで哀れな人。
私もあなたも、大馬鹿者だ。
窓の隙間から射し込む斜月がやけに眩しくて、
二人は乾いた涙を流しながら、逃避する。
神様、このまま時が止まればいいのにと＿
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シロナ(プロフ) - 玉ねぎさん» 玉ねぎさん、コメントありがとうございます。ゆっくり更新の作品にも関わらず、お読み頂けて嬉しいです。 (3月3日 11時) (
レス) @page37 id: 02fecad83b (このIDを非表示/違反報告)
玉ねぎ(プロフ) - 続き楽しみに待ってます！ (2月11日 18時) (レス) @page36 id: 42fa138aff (このIDを非表示/違反報告)
シロナ(プロフ) - コロロンさん» コロロンさん、初めまして。温かいお言葉ありがとうございます！沖田君素敵ですよね。私生活が多忙で頻度は下がりましたが、お待ち頂けますと嬉しいです。心のこもったコメントありがとうございました。 (2023年2月4日 14時) (レス) id: 02fecad83b (このIDを非表示/違反報告)
コロロン - 初めまして。コロロンと申します。小説、読ませていただきました！すっごくよかったです！作者さん天才としか思えません！沖田君が結構好きなので、今後も楽しみにしています！更新頑張ってください！ (2023年1月30日 22時) (レス) @page13 id: f9a6fa5b47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シロナ | 作成日時：2021年10月30日 0時
