第十二幕 出稽古 ページ14
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美雨が神谷道場に来て、早一月が経った。
身体の傷もすっかり癒えたようで、回復力の速さ
に医者の恵はとても驚いていた。
約束は、傷が癒えるまで＿
美雨が帰り支度をしようとしていた時。
「1人増えたところで変わらないでござるよ」
と剣心が宥めたことで、事態は収拾した。
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気持ちの良い晴天の日、庭で美雨が洗濯物を
干していると、薫に声をかけられた。
「出稽古に来て欲しい？」
白い肌着の皺を伸ばしながら、美雨は振り返る。
薫はこくこくと頷くと、両手を合わせて
「今日だけで良いからお願い出来ないかしら？」
と頼み込んできた。
元より、薫の頼み事には滅法弱いのだ。
美雨は少し困ったように眉尻を下げると、
縁側で魚を食べている左之に視線を投げかけた。
左之助は、チラッと此方を一瞥する。ポイッと
魚の骨を投げ捨てると、身を乗り出して言った。
「いいんじゃねぇか？姐さん、昔は剣心と
並ぶくらいの剣客だったって話だろう？」
「……それを誰から？」
「恵だよ。医者の目は誤魔化せねーぜ」
「なるほどね…」
美雨は、腑に落ちた表情で微笑むと、
心配そうに見上げてくる薫の頭を優しく撫でた。
様子を伺うように視線を投げかけられて、
美雨は思わず頬を緩ませると明るく言った。
「分かったわ。薫ちゃんの頼みですもの」
「本当!! 美雨さん本当にありがとう！」
太陽の光が反射して煌めくような薫の双眸に、
たちまち喜びが浮かび上がる。
「そうと決まれば早くしなくちゃ」
と手首を掴まれて、美雨はされるがままに
神谷道場から連れ去られた。
❁❀✿✾
袴姿に、ひとつに結われた長い髪。
剣士として振る舞う時はリボンは外すのよ＿
と、凛とした横顔で神谷薫は答えた。
「薫さん、お待ちしておりました」
薫の姿を認識した生徒達は、ざわと騒ぎ出した。
それもそのはず、暑苦しい道場で唯一の癒し
である彼女のとなりには、赤毛の剣客がひとり。
そして、小さな少年と佇む白髪の女性。
「凄い見られてるな」
弥彦は、居心地が悪そうに頬をかくと、
隣に居る美雨にひそひそと話しかけた。
美雨は思わず苦笑を浮かべると、弥彦を
宥めるように両肩に優しく手を乗せた。
「今日は、特別講義よ。
皆を教えるのは私じゃないの。」
薫が口を開いた瞬間、皆の意識が彼女へと
注がれる。凛とした横顔に、頼もしさを感じながら、
美雨はその様子を静かに見守っていた。
生徒達は、残念そうに声を上げていたが、
道場の師範に睨まれて、直ぐに口を閉じた。
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シロナ(プロフ) - 玉ねぎさん» 玉ねぎさん、コメントありがとうございます。ゆっくり更新の作品にも関わらず、お読み頂けて嬉しいです。 (3月3日 11時) (
レス) @page37 id: 02fecad83b (このIDを非表示/違反報告)
玉ねぎ(プロフ) - 続き楽しみに待ってます！ (2月11日 18時) (レス) @page36 id: 42fa138aff (このIDを非表示/違反報告)
シロナ(プロフ) - コロロンさん» コロロンさん、初めまして。温かいお言葉ありがとうございます！沖田君素敵ですよね。私生活が多忙で頻度は下がりましたが、お待ち頂けますと嬉しいです。心のこもったコメントありがとうございました。 (2023年2月4日 14時) (レス) id: 02fecad83b (このIDを非表示/違反報告)
コロロン - 初めまして。コロロンと申します。小説、読ませていただきました！すっごくよかったです！作者さん天才としか思えません！沖田君が結構好きなので、今後も楽しみにしています！更新頑張ってください！ (2023年1月30日 22時) (レス) @page13 id: f9a6fa5b47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シロナ | 作成日時：2021年10月30日 0時
