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おかえりも、ただいまも、
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「なんか楽しいわ、ふたりで見てるのって」
慶一郎くんと同棲することになって、生活が変わるからどちらかの家へ、ではなくて、改めて新居を借りようとなった。ふたりでインターネットのサイトで条件を入れて、検索候補の部屋を眺める。こういうのがいいとか、小さなこだわりも気づけて、なんだか嬉しい。「カウンターキッチン、いいよね。Aが料理してるの見れるし」「すぐ見慣れるよ」「そうかな? 多分毎日新鮮だよ」薄く開いた唇と、覗く白い歯、細められた目、愛おしい笑顔。君がいる日常は、いまだにわたしの非日常。
「これいいじゃん！」
同棲をはじめることになって、貴久くんと家具を見にきた。といっても、今いるのは普通の量販店ではなくて、貴久くんの好きなインテリアショップ。一点物のオブジェみたいなゴミ箱とか、彫刻みたいなテーブルとか、いっぱい。それらを見ながら慣れたようにすたすた歩く貴久くんに比べて、わたしははじめての空間を見渡しながら慎重に歩く。少し前にいた貴久くんはとあるものを指さした。近づくとそれは、銀製のキートレー。貴久くんは帽子のつばの下でくすりと笑う。「ちょうど二つくらい置けそうだしね」
「どう? 片付いた?」
休日。同棲のために荷物をまとめてシゲくんの待つ部屋へ向かった。家具は新調することにして、大きなものはなかったから、自分のコンパクトカーにダンボールを積んでやってきた。シゲくんと荷物を運んで、荷解きをして、休日返上でなんとか片付いた。シゲくんからの問いかけに頷くと、リビングに手招かれて飲み物を淹れてくれた。「先に家具入ってたから楽だったよ」「まあね、でも疲れたっしょ?」「いい運動だった」今日の夜何作ろうか?と小首を傾げるシゲくん。同棲初日からありがたみを噛み締めてしまって、これから堕落していかないか不安になった。それくらい、永遠に近いくらい長く続けばいいな、とも。
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あなたへ向けたくて。
同棲はじめてみた ページ10
おかえりも、ただいまも、
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「なんか楽しいわ、ふたりで見てるのって」
慶一郎くんと同棲することになって、生活が変わるからどちらかの家へ、ではなくて、改めて新居を借りようとなった。ふたりでインターネットのサイトで条件を入れて、検索候補の部屋を眺める。こういうのがいいとか、小さなこだわりも気づけて、なんだか嬉しい。「カウンターキッチン、いいよね。Aが料理してるの見れるし」「すぐ見慣れるよ」「そうかな? 多分毎日新鮮だよ」薄く開いた唇と、覗く白い歯、細められた目、愛おしい笑顔。君がいる日常は、いまだにわたしの非日常。
「これいいじゃん！」
同棲をはじめることになって、貴久くんと家具を見にきた。といっても、今いるのは普通の量販店ではなくて、貴久くんの好きなインテリアショップ。一点物のオブジェみたいなゴミ箱とか、彫刻みたいなテーブルとか、いっぱい。それらを見ながら慣れたようにすたすた歩く貴久くんに比べて、わたしははじめての空間を見渡しながら慎重に歩く。少し前にいた貴久くんはとあるものを指さした。近づくとそれは、銀製のキートレー。貴久くんは帽子のつばの下でくすりと笑う。「ちょうど二つくらい置けそうだしね」
「どう? 片付いた?」
休日。同棲のために荷物をまとめてシゲくんの待つ部屋へ向かった。家具は新調することにして、大きなものはなかったから、自分のコンパクトカーにダンボールを積んでやってきた。シゲくんと荷物を運んで、荷解きをして、休日返上でなんとか片付いた。シゲくんからの問いかけに頷くと、リビングに手招かれて飲み物を淹れてくれた。「先に家具入ってたから楽だったよ」「まあね、でも疲れたっしょ?」「いい運動だった」今日の夜何作ろうか?と小首を傾げるシゲくん。同棲初日からありがたみを噛み締めてしまって、これから堕落していかないか不安になった。それくらい、永遠に近いくらい長く続けばいいな、とも。
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あなたへ向けたくて。
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作者名：奮 | 作成日時：2023年8月25日 13時
