急遽ショッピング 裏話 7 ページ9
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「可愛いから」
「え、キリューちゃんって美形好きなの?じゃ、俺の事も好き?」
蘭はつい、いつものテンションで問うた
「灰谷兄は好きじゃないかな」
「嘘だー」
「それこそ、本当
まー、あんま理由が無いのは確かだけど、強いて言うなら“可愛いから”」
「マジで?そんな理由で生かすの?さっき、めっちゃキレてなかった?」
「幻覚じゃない?私がキレてたのは
「あ、そう。了解」
霧璃歌の静かな目に蘭はそっかーと清々しく答えた
「でも、逆恨みしてきたらどうすんの?」
「どうしよ」
どこか様子がおかしい霧璃歌。蘭は注意深く霧璃歌を見つめながら、伏せられた目線の先を追った
「うーん、殺すかな」
「同じじゃん」
「ていうか、おかしいよね。私に逆恨みとか。私、なにもしてないのに。行くべきは灰谷兄のとこでしょ」
「そーかなー」
「うん。そう」
「そっかー」
知能レベルの低い相槌を交わし合いながら、蘭は一つ迫った
「ねぇ、灰谷兄って呼び方、やめてよ」
「‥‥‥」
しっとりと艶のある蘭の声に霧璃歌はぱちと一つ瞬いた
「なんで?」
ゆっくりと小首を傾げ、また一つ瞬くその様はまるで幼子の様だった
「言いにくくない?」
「全然」
「あれま」
言動が赤ん坊のように思えても塩対応は相変わらず。「呼びたくなったら呼んでよ」と自分からでは絶対にありえなさそうなことを蘭は言って一旦この話をやめにした。ばぶちゃんモード(命名・灰谷蘭)を狙っておねだりしても大して反応が無いという事が分かったからだ
「おふざけしてないで、サッサと戻ろう、灰谷兄」
「そーだな。竜胆、絶対に一人ぼっちになって寂しくて泣いてるわ」
「それはない」
えー、あるかもよと蘭は気を取り直して積極的に霧璃歌に絡んでいく。物理的な距離の近さはここの近さに
すると、
「“蘭”、」
「‥‥っ、ぇ」
先ほどのお遊びのような蘭の声の何倍も色気のある声で迫られ、自然な霧璃歌の己の唇への視線に蘭は「あ、キスされる」と柄にもなくキュンとした
「‥‥‥‥‥え」
「ここ、禁煙」
するっと口から盗られた煙草
期待しただけに拍子抜けな蘭は恥ずかしさ故に片頬を叩いた
「マジか」
霧璃歌はニヤッと笑って先ほどまで蘭が加えていた煙草を口にして一口吸う
「!」
「‥‥ウン不味い」
「え、なに今の。も一回」
「や・だ」
思わぬ霧璃歌の男らしさと女らしさを垣間見た蘭の話
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作者名:潮見 不可 | 作成日時:2023年2月11日 20時