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急遽ショッピング 裏話 6 ページ8





「――‥‥っ、やった、これで邪魔ものが消えた‥‥‥」

 店員が呆然と、されど嬉し気に上気した頬でつぶやく。だが、文字とは裏腹に店員はもみくちゃになった所為で髪が崩れ、血走った目で色々と残念な姿だ。いっそ、狂気的ともいえる


「――‥‥はー‥‥」

 一方、蘭はすげなく遠ざかったニットの背中を見て、髪をガシガシと掻きまわしながら息をついた

「蘭さん?」

 蘭の雰囲気が変わったことに気付いた店員が気遣わし気に上目遣いで見つめてくる
 その姿が万全であったならば、庇護欲をそそるような見た目と声音に一般の男はクラっと来てしまうだろうが、蘭は無感動な目で一瞥し、

「ねぇ、邪魔なんだけど」

 と店員の感動を台無しにするような低音で言った

「え、‥‥蘭、さん、どうしたの?」
「はぁ‥‥‥‥話になんねえな
 ――一成(いっせー)

 蘭の諦めの早い声と同時に一人のチャラそうな青年が廊下の陰から現れる

「うっす」
「この女、適当なとこに捨てとけ」
「いいんすか?」
「店長には俺が言っとく。ココの店長なら勝手に勘違いして喜ぶだろ」
「了解っす」
「‥‥あー、騒ぐようなら殺してもいい」
「うっす」

「どういうことなの!?蘭さんっ?どうして!」

 みっともなく叫んで喚く店員に蘭はちらりと視線を向け、直ぐに興味が失せた様に胸元から煙草を取り出す

「じゃ、頼んだわ」
「うっす
 ――‥‥おい、あんた。大人しくしてろよ。悪いこと言わねえから」

 ひらひらと店員ではなく己の部下に手を振り、蘭は煙草をくわえる

(あーあ、失敗したなー)

 スパーと店内であるとか禁煙であるとかは全く考えずに吐いて吸う。おたくのせいで嫌な気分になったんだから別にいいだろと勝手な考えだ――いや、それすら考えていないかもしれない。吸いたいから吸う。たぶんそれだけの理由


「――ここ、禁煙」

 ぽろっと、思わぬ再登場に蘭は口にくわえた煙草を落としそうになった。すっかり戻っているものだと油断していた

「キリューちゃん」
「殺すのはやめてあげなよ。そもそも、灰谷兄の顔が良い所為。思わせぶりな態度をとって勘違いさせる魔性すぎる性格の所為」

 どういうこと?と思わず動揺も露わにあの店員のように問いそうになったが、ゆっくり溜めてから何でもないように答える

「いや、本当に俺なんもしてないんだけど」
「あっそー。じゃ、捨てるだけにしてあげな」
「‥‥別に、キリューちゃんが許すならいいけど、なんで」

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作者名:潮見 不可 | 作成日時:2023年2月11日 20時

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