急遽ショッピング 裏話 ４ ページ6
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「だよねぇ」
「ま、よかったわ。キリューちゃんが見つからなかったら三途に連絡しなきゃいけなかったし」
「えー、それはやめてー。キリューちゃん困っちゃうから」
「だよなぁ。だから、蘭ちゃんが直々に探しに来てやったわけよ〜」
一言どころか一文ごと余計な灰谷兄に、霧璃歌は“それは”と強調してお礼を言う
「“それは”、どうもありがとう」
殊勝な態度だが、
「どーいたし―――」
「じゃ、私は戻るので後は二人でごゆっくり〜」
にこにこイイ笑顔の灰谷兄は癪だったので、バッサリ遮って、灰谷弟の元へ戻ろうとすると―――
「まてまて」
「うわっ」
(ぐぇー、うげぇー)
首根っこを猫のようにぐわーんと捕まえられて、その場に引き留められる
霧璃歌は灰谷兄の手を避けるべきだったかと後悔した
「なにー。離してー、これニットなんだからー」
のびるぅーとこれ以上新品のニットセーターを犠牲にしないためにもジッと動かずに訴える
「行かないでくれたら離す」
「はぁー？ 私は被害者だけど、この件には何ら関係ないんです。わかりますー？」
「分かるわけないでしょ？ なんでオレが原因だって頭ごなしに決めつけられるのかな？」
コイツマジかと顔を作ってバチバチやりあう二人に店員は目を白黒させて、どこかに意識を飛ばしている
「見ればわかるでしょ〜？ 恋心の一つや二つも認識できない男だったかな〜？」
「‥‥‥」
コイゴコロ？と宇宙を見た猫のような顔をして沈黙した灰谷兄
あー、これは私が行っても予想したとおりにしかならないわと半ば諦めの表情で、蹲ってしまった店員に訊ねる
「閉じ込めた動機は？」
「動機‥‥‥」
表情は完全に苦々しい物を超えて、男女中のいざこざに巻き込むのはやめてくれと心底うんざりとした顔だった
「――あなたが‥‥」
「お？」
「あなたが邪魔だったからぁ！！」
「おう‥‥」
単純極まりなく、明快な動機に霧璃歌は少し引き気味
どこぞの少女漫画を見ている気分だ
「私は、私はぁ！ あくまで店員で、灰谷様との距離を守ってたのに！ あなたみたいな女がべたべたべたべたっ気易く触って！ 邪魔なのよっ！ 彼は私のよ！！」
ほーぅ？と霧璃歌は傍から見れば立派な修羅場を他人事のように小首をかしげながら
「だとさ〜」
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作者名：潮見 不可 | 作成日時：2023年2月11日 20時
