ボツになった霧璃歌、登場シーン 前 ページ1
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ゆっくり上昇していくエレベーター
「あ、ねえねえ、マンジロー。スマホ、持ってる?」
「ん?持ってるけど‥‥なんだ?」
「ちょお〜っと貸してくれる?」
ニコッと悪意などひとかけらも見えない顔で霧璃歌は頼む
「‥‥‥ん」
マンジローはなにも言わずに貸してくれた
(ん、いい子)
「ふんふん、ふ〜ん」
上機嫌に霧璃歌はスマホを――一瞬、ためらったものの、次の瞬間には――迷いなく操作していき、ある画面をタップして、指の動きを止める
すっと一瞬、光の角度で見えた画面には【呼び出し中、三途春千夜】の文字が
「‥‥‥」
ふんふんふふんと、嫌に上機嫌な霧璃歌をマンジローは、不思議そうに、不安そうに見守っている
prrrr prrrr ガチャ
僅か数回のコールで繋がったことに、霧璃歌はにんまりと更に、機嫌よく笑顔になる
『マイキー、どうしましたか?』
「もしもし」の定型文すらもすっ飛ばして、“王”であるマンジローの要件を気遣う春千夜に、霧璃歌は笑い出しそうになるのをこらえて、何も言わない
静かに見持っていたマンジローに、霧璃歌は「しーっ、ね?」と無言で、口元に人差し指を当てるジェスチャーを送る
「‥‥‥」
「‥‥‥」 コクリ
マンジローは?マークを浮かべながらも、無言で頷き返す
なかなかに神妙な空気のエレベータ内であっても、霧璃歌を止めることはしない
それは霧璃歌かがなにか、変なことをするはずがない、という信頼か
それとももう、すでに霧璃歌の
「‥‥‥」
『‥‥マイキー??』
「私、キリ―さん」
『は‥‥?』
にんまりとゆがめられた霧璃歌の口元から出た言葉に、マンジローは唖然とするほかない
「まさか、こいつ‥‥」だ
『誰だ、テメエ
マイキーを何処にやった‥‥!』
「私、キリ―さん
今、エレベーターの中にいるの」
「チッ。おい!お前ら! マイキーがゆk‥‥」
文脈の最中でプツとキレた電話
大方、話が通じないと悟った
だが、安心してほしい、春千夜よ
マンジローは誘拐などされていない
こうして、もう好きにしろと言う顔を前面に押し出すことが出来るくらいには元気だ
〈まさかの〉
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作者名:潮見 不可 | 作成日時:2023年2月11日 20時