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イザナは困った。
あの部屋の前を通らないと1階には行けないからだ。しょうがない、と部屋の方を極力見ないようにイザナは走った。
雨はダンダン強くなり、廊下は夜のように薄暗かった。
「入ってます」
雨音の中に、か細い女の声が混じった。
水っぽい、湿気った声であった。
イザナはピタ足を止めた。ゾと悪寒が走り、頭がスゥと冷たくなった。
そこは丁度、あの部屋の前であった。
部屋の扉の隙間から、髪を前に垂らした女が体操座りで座っていたのである。
「入ってます」
女はイザナを見上げた。
長い髪の隙間から覗く顔は、真っ赤だった。
赤い文字で埋め尽くされていたのだ。女は何も映さない白い目でイザナを見た。イザナをジと見つめていたのであった。
……
「え、それで大将どうしたの」
蘭が前のめりになって、声を出した。周りの奴らも僅かに体を前に傾けており皆がイザナの話を聞いていた。
竜胆はいつの間にか蘭の隣に移動しており、ギュと洋服の裾を握りしめていた。
ちなみにカクチョーもイザナの後ろに控えているがイザナの肩の部分の洋服を掴んでいる。怖かったので。
イザナは望月の広げたお菓子を食べながら「特に何も」と言った。
「え?」と蘭は目を丸くした。あのイザナだ。こんなところで終わるような男じゃない。
パラパラと指に着いた粉を落とすイザナの頭部を見つめ、蘭が口を開こうとした時
「持ってたハサミ投げつけた」
「お」
イザナは突然顔を上げ、右手を振り下ろした。恐らくハサミを投げつける様子を再現をしているのだろう。振り下ろされた右手はドン!と鈍い音と共に机にぶつかった。
イザナの後ろで話終わった!とわたパチを食べていたカクチョーが噎せた。わたパチのパチパチアメが直接喉に入ってしまったからだった。
「そしたらパリンって音がして、女がいなくなった。何でだと思って部屋の中に入ったら、俺が投げたハサミがあの三面鏡に刺さってた。おかしいよな、俺は確かに女に向けた投げたのに」
なんで三面鏡が割れてたんだろ。
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月野 - この手の話、今まで無かったので新鮮でした!とても面白かったです!!更新楽しみにしています! (2022年10月6日 2時) (レス) @page19 id: dccd327fc0 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 軍時さん» まじですか?ありがとうございます!! (2022年9月25日 22時) (レス) id: 1a9036ae39 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 武道可愛いですねw。空になったペットボトルまだ持ってるなんて…。竜胆は武道になにをあげるんだろう。気になります!斑目の設定考えた主さんが天才すぎる!! (2022年9月25日 22時) (レス) @page19 id: 1a9036ae39 (このIDを非表示/違反報告)
軍時(プロフ) - 零さん» 特殊な訓練を受けている彼らだからこそ出来る対処法なので実際には…です笑なのでたけみっちがペットボトルをブンブン!と降っても除霊は出来ないことになりますね、かわいいですね🌼楽しいと思って貰えてとても嬉しいです🥰コメントありがとうございました! (2022年9月25日 18時) (レス) id: 9794be9817 (このIDを非表示/違反報告)
軍時(プロフ) - 零さん» 大丈夫ですよ〜!ゆっくりにはなりますが更新頑張りますね💪 (2022年9月25日 18時) (レス) id: 9794be9817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:軍時 | 作成日時:2022年9月13日 11時