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「え?今何したんすか」
「うるせぇ。話しかけんな」
眠くて機嫌の悪いイザナは右手でトイレの扉を閉めると花垣の背中を押して距離をとった。花垣は遠くなるトイレを見て「あ」と声を漏らした。
先程いた場所に、小さな水たまりが出来ていたからだ。
「イザナくん、水たまりが」
「おう」
「さっきまでなかったのに、」
「花垣」
「は、はい」
「黙れ」
花垣は黙った。
イザナが本気でキレそうだったからだ。そんな二人の後ろから「大将」と声がかかった。
ドタドタと数人の男たちが現れる。広かった廊下は直ぐに狭くなった。
花垣は男たちを見つめた。横浜の赤い悪魔、天竺の幹部達である。
「よし、いけ斑目」
竜胆は眠そうにそばに居た斑目の背を押した。斑目はよく分かんなかったので「?」と首を傾げながらトイレへと向かった。後ろの野郎共はその場を動かなかった。
トイレの前に到着し、とりあえずトイレの扉をトントンと叩いてみた。
何も返事はない。
「これなに」と野郎どもの方を振り向こうとした時である。
「斑目!」
トイレの扉がバン!と大きな音をたて開き、中から顔のない女が斑目をトイレの中に引き摺りこんだのである。
「なんすかアレ、なんすかアレ!!」
「今回はそこそこ大物ってわけだ」
「竜胆なんか持ってない?」
「たまごボーロある」
「それでいいわ」
「え、なんでそんなに冷静なんすか??!」
ぎゃーわー!と一人叫ぶ花垣を他所に、天竺組はわちゃわちゃとお菓子交換をしていた。
蘭はたまごボーロ、竜胆は二リットルの空ペットボトル、望月はヨーヨー、ムーチョはスライムである。
なんでそんなん持ってるの。花垣はもう何も言わなかった。多分突っ込んでも答えてくれないと思ったから。
最初に動いたのはイザナである。
彼はトイレの扉を勢いよく開けると持っていた(蘭に分けてもらった)たまごボーロを何かを叫ぶ女に向かってペ!と投げたのである。
その後ろから追随するように野郎どもがたまごボーロやらペットボトルやらヨーヨーやらスライムをベチョと投げた。
顔のない女は「わ……」とちいかわのような声をあげてキラキラと消えていった。
「完了」とイザナが呟いた。
数秒間の一方的な攻めであった。
トイレの中には驚いた猫なような顔をする斑目が腰を抜かして便座にもたれかかっていた。唖然とする花垣の隣に竜胆がテクテク歩いてきた。
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月野 - この手の話、今まで無かったので新鮮でした!とても面白かったです!!更新楽しみにしています! (2022年10月6日 2時) (レス) @page19 id: dccd327fc0 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 軍時さん» まじですか?ありがとうございます!! (2022年9月25日 22時) (レス) id: 1a9036ae39 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 武道可愛いですねw。空になったペットボトルまだ持ってるなんて…。竜胆は武道になにをあげるんだろう。気になります!斑目の設定考えた主さんが天才すぎる!! (2022年9月25日 22時) (レス) @page19 id: 1a9036ae39 (このIDを非表示/違反報告)
軍時(プロフ) - 零さん» 特殊な訓練を受けている彼らだからこそ出来る対処法なので実際には…です笑なのでたけみっちがペットボトルをブンブン!と降っても除霊は出来ないことになりますね、かわいいですね🌼楽しいと思って貰えてとても嬉しいです🥰コメントありがとうございました! (2022年9月25日 18時) (レス) id: 9794be9817 (このIDを非表示/違反報告)
軍時(プロフ) - 零さん» 大丈夫ですよ〜!ゆっくりにはなりますが更新頑張りますね💪 (2022年9月25日 18時) (レス) id: 9794be9817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:軍時 | 作成日時:2022年9月13日 11時