やっとかよ (ページ8)

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「なんで、私なんかを、」と小さな声で言った。
場地は「はぁ？」と声をこぼした。虚をつかれた。
「だって」と女は続ける。

「私、可愛くないし。一重だし。太ってるし。性格だって暗くてモジモジしててつまんないし。人に迷惑だってかけるのに。けーちゃんにも沢山迷惑かけたのに。なんで、」

てんてんてん…。と場地は固まった。
ん？今、この女何を言ったのだろうか。
え？場地は今女に好きだと伝えたじゃないか。
なのに、なぜその返答は女のコンプレックス公開に繋がるのか。
？？が頭を覆い尽くす。
眉を下げて泣きそうな女をジッと見つめた。
「は？」ともう一度言葉が漏れた。

「いや、何言ってんだよイキナリ」
「だって、皆言ってるから。ブスなのに調子乗んなって。けーちゃんが相手してくれるのは、けーちゃんが優しいからで、変な勘違いしてんじゃねぇよって」
「……皆って、誰」
「……」

女は黙り込んだ。
顔は見えない。
下を向いているから、髪が邪魔をするのだ。

「俺はそんなこと一度も聞いた事ねぇぞ。少なくとも男どもはンなこと言ってねぇ。お前の言う皆は皆じゃねぇだろ」
「……だって」
「好きだよ」
「……」
「俺は一重なんて興味ねぇし、太ってるとかどーでもいい。一重でも、二重でも太ってても痩せててもお前は可愛い。俺が可愛いって思ってるから何が何でも可愛いんだよ。性格？ンなもん前から知ってるつーの。何年お前のこと見てると思ってんだ。舐めんなよ」

フゥと息を吐く。
場地は、下を見る女の頬を両手で包んだ。
上に持ち上げると見えなかった女の顔が見える。
顔は真っ赤で、ウルウルと瞳が輝いている。

「迷惑？ジョウトーじゃねぇか。そんならずっと俺の隣にいてかけ続けろよ。惚れた女に迷惑かけられるんだ。振り回される権利を貰えるんだ。これで喜ばねぇ男はいねぇよ」

ポロポロと女の頬を涙が伝う。
「うぅ」と小さく嗚咽を零す女を場地は眺めた。
何がブスだ。
何が可愛くねぇだ。こんなにも小さくて、優しくて、かわいい女、場地は今まで見たことがない。

「好き。けーちゃん。私も、けーちゃんが好き」

途切れ途切れに、女は言う。
場地は「おう」と答えた。
甘くて苦い。
それが恋なのだ。
やっぱり真一郎くんってスゲェなと関心をしていた場地に、心の中の万次郎は不機嫌そうに「やっぱお前ソーラン節な」と睨んできた。
その隣には、あれなんかいい方向に転がったと少し驚くドラケンがいたのであった。