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(かわいくなりたい!のお話)
女は自分に自信がなかった。
小さい頃から親に「周りをよく見なさい」「協調性を持ちなさい」と言われてきたから、自分の意志よりも他の人の意志を尊重するようになった。
そうしていくと、次第に女という存在がなくなってきて、「私はなんでもいいよ」とニコニコ笑うつまらない奴になっていく。
女がこうしたい、と親に言っても「××ちゃんの話は聞いたの?」「××ちゃんに聞いてから決めなさい」と言われてきたから。
親は女じゃなくていつも他所様の子供を優先するのだ。他人を優先するのだ。
私は、私の意見を大切にしちゃダメなのかな。私の事は、どうでもいいのかな。
女は次第に下を向くようになった。
自信が、彼女の背中に重くのしかかり顔を上げさせてくれなかった。
だけど、そんな女を好きだと言う人がいた。
お前がいいと、どんなお前でも俺は好きだと、女を引っ張りあげてくれた人。
女は幸せである。
毎日がキラキラして、泣きたくなるくらい優しくて温かくて、本当にこんな幸せでいいのかなと不安になるくらい。
でもけーちゃんはモテる。
かっこよくて、喧嘩も強くて、男の人からも人気があって、頼りがいのある人だから。
よく告白されたという噂が聞こえてくる。
女は焦った。
場地に告白するのは可愛い子ばかりだ。
私のままでいいと場地は言ってくれた。どんなお前でもいいと。だけど、
「綺麗になりたい?」
場所は神社境内。
辺りは暗く、バイクが所狭しと並んでおり少々治安の悪い場所であった。
女の前にいるのは佐野エマ。場地のお友達の妹さんらしい。
たまたま訪れたこの場で仲良くなり、そこからよく話すようになった。
エマは金の髪をフワリと靡かせ、女を見た。
女の顔は真剣である。エマは「うむ」と唇を尖らせて、その後ニヤリと笑った。
「彼氏か」
「わ」
「いいのいいの。女が綺麗になりたいって思うのは大体男の為よ」
振り向かせたいとか、見返したいとかね。
後は自分の為。
エマは女に抱きつくと、「圭介くんを驚かせちゃおうね」とかわゆく笑った。
女はポポと顔を赤くさせ「うん」と呟いた。
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作者名:軍時 | 作成日時:2022年9月5日 20時