恋愛なんてしたくない。【黒】 (ページ7)

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明日もレギュラー番組の収録があるからと

帰る準備を始める佐久間くんと、
当たり前のように財布を出し始めるふっかさん。

やばい、このままだと俺はただの客の中の1人になる。

いや、実際そーなんだけど。
少しでも彼女の印象に残りたい。

笑顔で店を出ようとするふっかさんと佐久間くんを

店員さんは嬉しそうに見送っていた。

かっこいいな～とか思ってんだろうな。
そりゃそうだろ、
男の俺でも思うんだから。

特にふっかさんなんか大人の余裕がある。
いつもイジられてるけど、実はこの人がリア恋枠らしいし。

今日も主に話してるのはふっかさんだった。

俺も
もっとこの子と話したい。
もっと知りたい、色んなこと。

どうすればいい？
いきなり連絡先聞くのはまずい？

せめて名前だけでも知りたい。

そう思った俺は勇気をだして
外に出る1歩手前で振り向いた。

｢ごちそうさまでした。美味しかったっす。｣

すると彼女の顔が少し赤くなった

……ような気がした。

すぐに普通の笑顔に戻ったから気のせいかもしれない。

なんだかふっかさんたちに負けた感じがして悔しい。

いや、諦めるな俺。

｢あの、名前なんていうんすか？｣

たった一言なのにすげー緊張する。
久しぶりの感覚だった。

『え！？あ、名前は、、滝沢Aっていいます』

なぜ名前を聞かれたのか不思議そうにこっちを見る顔は、身長のせいで必然的に上目遣い。

こんな可愛い上目遣いするのは、あべちゃんかこの子くらいだろう。

そんな可愛い顔で見ないでくれ、まじで。

｢Aさん、また来ますね」

冷静を装って余裕の笑顔を向ける。

俺、本格的に堕ちたかも。

不思議そうな顔をする店員さんを後にして、
店のドアを開けた。