恋愛なんてしたくない。【黒】 (ページ18)

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勢いで誘ったご飯

それでも彼女はちゃんと来てくれて、

｢ん～すごく美味しい！｣

俺の前で、口いっぱいに頬張って、美味しそうに食べている。

いつものシンプルな服じゃなくて、
今日は少し可愛い系。

それに、髪下ろしてるとこ初めてみた。

『気合い入れすぎちゃったかな』

その言葉だけで嬉しくなる

｢めっちゃ可愛い｣

そう言うとあからさまに顔が赤くなるA。

それに気づかずに平然を装ってるところも

全部が可愛くて堪らない。

幸せな時間を終えて外に出ると大粒の雨

あーあ、どうすっかなこれ。

そう思っていた時、Aの言葉に耳を疑った。

『私の家なら近いし、雨宿りしてく？』

これは意図的？それとも天然？
そもそも本気？

でも彼女の表情はいつもと変わっていなくて

意識してんのは俺だけか。

俺はAの素直な言葉に甘えることにした。

｢適当に座ってて！｣

そう言ってキッチンに立つ彼女も

女の子らしいきちんとした部屋も

全てが俺をドキドキさせた。

でもなぜだろう、

一緒に帰った時も、ご飯の時も、そして今も

埋まりそうで埋まらない少しの距離間

近づきたい

触れたい

名前を呼ぶとすぐに隣に座ってくれて

なんだ、距離を埋めるのなんて簡単じゃん

そう思って
俺は彼女を抱きしめた

でも俺の考えは間違っていた、

『蓮くんは信頼できる友達だから』

ずっと感じていた距離間は

心の距離だった。

俺がどんなに近づいても

彼女は肝心なところで上手にかわそうとする。

ねぇどうして？

すぐに顔を赤くしたり
俺の話を嬉しそうに聞いてくれたり
照れながら家に入れてくれたり

近づけたと思っていたのは俺だけ？

俺はこれ以上どう頑張ればいい？

少しでもAの感情に俺が残るように

もう一度抱きしめて

彼女の家をあとにした。