恋愛なんてしたくない。【黒】 (ページ11)

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昨日オープンしたばかりの店だけど、今日も多くのお客さんが来てくれた。

嬉しいな。この光景が夢だったんだもん。

｢またお越しください｣

最後のお客さんが帰って、閉店の準備をする。

食器を片付けて、少し掃除をして、
荷物を持って外に出た。

日が落ちるの早くなってきたなぁ

なんてことを思っていた時、

看板の横に、見覚えのある高身長イケメンがいることに気づいた。

｢目黒……さん？｣

それまでスマホをいじっていた彼が
ハッとした顔でこっちを見る。

え？なんでこんな所にいるの？

誰かと待ち合わせかな。

『あ、っと…お仕事お疲れ様です』

｢いえ！目黒さんこそお疲れ様です！」

「誰かと待ち合わせですか？｣

『いや、あの、俺もちょうど仕事終わったんで、Aさんに会えるかなと思って』

え、私？

｢すいません、お店なら今日はもう終わりなんですけど…｣

『知ってます、良かったら一緒に帰りません？』

知ってるのになんで来たんだ？

やっぱり目黒さんの考えていることはよく分からない。

それでも断る理由は見つからなくて、

｢あ、じゃあ、お言葉に甘えて…｣

1日くらい、イケメンと帰ってもバチは当たらないかな。

ていうか男性と2人で帰るなんていつぶりだろう。
もう覚えてないや。

何を話せばいいか分からなくて、適当に話題を振ってみる。

｢目黒さんのおうちはここから遠いんですか？｣

『いや割と近いっす、てか敬語やめません？』

｢あ、はい、分かりまs……じゃなくて、分かった｣

『それから、目黒さんってやめて？』

｢え、じゃあ目黒くん？｣

『もう一歩近づいて』

｢……蓮くん？｣

その瞬間、彼は両手で顔を覆った。

｢え？どうしたの？｣

『や…なんでもない、これからはそうやって呼んで』

｢あ、うん、分かったけど、
その代わり蓮くんもさん付けやめて｣

『なんて呼べばいいの？』

「ん～呼び捨てでいいよ」

『A』

…っと、自分で言っておきながら何でドキッとしてるんだ。

慣れないな、こういうやり取り。

｢なんか…恥ずかしいね笑｣

『こっちが恥ずかしくなるっつーの』

｢ごめんごめん笑｣

その後はたわいもない会話をして

結局私の家の近くまで送ってくれた。

日の落ちた帰り道では、

彼の顔が赤くなっていたことなど

気づくはずもなかった。