惨めなアタシ ページ20
私は言ノ葉家の長女として楽器の練習に勤しんでいた。
お母様は世界的ピアニスト、お父様は大手楽器メーカーの社長。
周りは皆私に期待した。
だから私はその期待に応えようと努力した。
そして6歳になってすぐの頃…
看護師「とても可愛らしい女の子ですよ。」
妹が生まれた。
天使のような美しさだった。
すごく嬉しかった。
ずっと下の子が欲しかったから。
お母様「ねぇチハル。この子、なんて名前にしましょうか。」
チハル「…A。A！」
お父様「A…良い響きだ！良かったなA。」
それから月日は河のように流れていき…
A「お姉様！お姉様！おうたを歌って遊びましょう？」
チハル「ええ、いいわよ！」
Aは4歳、私は10歳になった。
そしてAの5歳の誕生日の日だった。
Aがお庭で遊んでいた日、巷で噂の誘拐犯が家に忍び込んでいた。
誘拐犯「お母様のコンサート会場まで連れて行ってあげるよ。早く来い！」ｸﾞｯ
A『やだ！あっち行って！！』
ﾊﾞｰﾝｯ
A『…え？』
妹の個性が発現した。名前は「言霊」。
お母様達は喜んだ。世界一の歌手になるかもしれない、と。
その日から、妹とは一緒に過ごす日は徐々に減っていった。
夫人１「A様は素晴らしい方よね。歌もお上手で、笑顔で愛嬌もあって。」
夫人２「それに比べてチハル様は無愛想で最近は自室に籠り続けているとか。」
夫人３「言ノ葉家の後継ぎはA様になりそうね。」
わかっていた。
私が妹より劣っていることなんて。
だけど諦めたりしない。
いつか輝きが見えることを願って。
ひたすらに自室で練習をしていた。
…でも
3年経っても、5年経っても、8年経っても
そんな日は来なかった。
A「ﾁｮﾝﾁｮﾝ」
チハル「…なぁに？Aちゃん」ﾆｺｯ
A〈お姉様に見せたくて〉←スケッチブックに書いた
ー全国バイオリンコンクール 最優秀賞ー
ﾌﾟﾂﾝ
賞状を見た時、何かが切れる音が聞こえた。
あぁ…私が8年も費やした時間と努力は
この子のたった1音で掻き消されてしまった。
何をやってもこの子には勝てない。
惨めだな…。
憎んでも惨めになってもこの子を傷付けることも出来ない私の弱い心も
惨めだな…。
そんな日に出会ったんだ
オールフォーワン「辛かったね、大丈夫だよ。僕がいる」
先生に
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作者名：rico | 作成日時：2022年3月4日 22時
